2021 Fiscal Year Research-status Report
アルギニンとフッ化物の併用によるヒトデンタルバイオフィルムの病原性抑制
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20K18504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 菜々子 (栗木菜々子) 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60781432)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | デンタルバイオフィルム / 次世代シーケンサー / 制御 / アルギニン / フッ化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
オーラルバイオフィルムはう蝕や歯周疾患に深く関与しており,全身疾患との関連においても注目されている.一般的に,感染症治療の第一選択は抗菌療法とされてきたが,このバイオフィルムは抗生物質に耐性があるため,抗生物質の使用により口腔内細菌叢のバランスが崩れるという問題点が分かってきた. 近年,唾液成分のひとつであるアルギニンによるプレバイオティクスの効果が注目されており,申請者らが考案したバイオフィルムモデルを用いて,アルギニンの効果判定を行ったところ,口腔内のpHを上昇させ,細菌叢を変化させることを明らかとした. さらに,フッ化物は,そのう蝕予防効果が認められているため、アルギニンとフッ化物を併用した場合,細菌叢への効果が増強されるのではないかと考えた.本研究の目的は,申請者らが考案したバイオフィルムモデルを用いて,メタゲノム解析によりアルギニンとフッ化物の併用効果を定量的・網羅的に検索し,病原性抑制に対する効果判定を行うことである. 本年度は8%アルギニンおよびフッ化物配合歯磨剤を4週間使用して,口腔生菌数およびバイオフィルムへの影響を探索するため、共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)によるバイオフィルムの3次元的定量観察を行った。これより、使用後はバイオフィルムの厚みは増加するものの、生菌体積は減少し、死菌体積が増加する傾向にあることが認められた。 以上のように,アルギニンおよびフッ化物のデンタルバイオフィルムへの効果を多面的に評価し,その相乗効果の判定を行うことで,新規アルギニン製剤の創出を目指している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ヒトのデンタルバイオフィルム制御を目的とした新規アルギニン製剤の創出を目指している.現段階で,申請者らが新たに開発したin situバイオフィルムモデルを用いて,8%アルギニンおよびフッ化物配合歯磨剤を使用する前と後での口腔内生菌数およびNH4+への影響を検索した.その結果,生菌数には変化は認められなかったが,口腔内のNH4+の増加が認められた.これより,8%アルギニンおよびフッ化物含有歯磨剤を使用すると,口腔内のNH4+を上昇させることによって,口腔内生菌数には影響を与えず,口腔内細菌叢のみを変化させる可能性が示唆された.また,本年度は共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)によるバイオフィルムの3次元的定量観察を行い,生菌および死菌体積への影響を検索した. 今後としては,さらにNGSを用いた多面的な解析を行い,アルギニンとフッ化物の併用効果の判定を行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,NGSを含めた多面的な解析を行い,アルギニンとフッ化物の併用効果を定量的・網羅的に検索し,病原性抑制に対する効果判定を行う必要があると考えられ る.下の評価を行い,アルギニン単体の効果と比較検討する. メタゲノム解析によるバイオフィルム細菌叢の同定および機能解析;ディスク上のバイオフィルムを回収し,DNAを抽出後,NGSを用いて,バイオフィルムを構成す る細菌を同定し,細菌叢への影響を評価する.さらに機能解析を行うことで,病原因子および代謝産物への影響を評価する. 以上のように,アルギニンおよびフッ化物のデンタルバイオフィルムへの効果を多面的に評価し,その相乗効果の判定を行う.また,そのメカニズムを解明することで,アルギニンおよびフッ化物を添加した新規抗バイオフィルム製剤の創出を目指している.以上から得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度もコロナ禍により成果発表を行う旅費が不要であった.また,産休により,研究が中断されたため,次年度に口腔細菌叢・病原因子および代謝産物の影響の評価を行っていくため,DNA抽出キットおよび次世代シーケンス解析等の物品費に約130万の支払いを行う予定であり、その人件費および成果発表費のため,約40万の支払いを行う予定である.
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Research Products
(3 results)