2020 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリット組み換えPhosphophorynを応用した新規歯髄保存療法の開発
Project/Area Number |
20K18510
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中西 惇 広島大学, 病院(歯), 助教 (20848064)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 組み換えタンパク質 / 抗炎症機能 / 細胞接着活性 / DPP / DMP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
象牙質基質中に最も多く含まれる非コラーゲン性タンパク質である Phosphophoryn (PP) は Small Integrin-Binding Ligand N-linked Glycoprotein (SIBLING) タンパクファミリーに属する象牙質の石灰化において重要な役割を担うタンパク質である。申請者らは哺乳類細胞から組み 換え PP を精製する手法を樹立し、PP の機能解析を行う中で PP が従来報告されてきた石灰化誘導能のみならず抗炎症機能を有することを明らかにしてきた。 PP は RGD 配列を有するもインテグリン依存的な細胞接着活性が RGD 周囲のアミノ酸配列によって阻害されている。 本研究では、細胞機能制御に基づく新たな歯髄保存療法(覆髄法)を確立するために、細胞接着活性を示さない PP の RGD 配列周囲のアミノ酸配列を、PP 同様 SIBLING タンパクファミリーに属し、インテグリン依存的な細胞接着活性を有する Dentin matrix protein-1 (DMP-1)型の配列に改変した改変型組み換え PP の細胞接着能、硬組織誘導能および抗炎症機能を調べることを目的としている。 2020年度は液体クロマトグラフィーを併用した組み換えタンパク質の精製法によって得られた高純度な改変型組み換えPPを用いた in vitro での細胞接着活性および抗炎症機能に関する検討を行った。マウス骨芽細胞を用いた細胞接着活性については組み換えDMP-1と同程度の細胞接着活性を示す結果が得られている。さらにLPS刺激ヒトマクロファージ様細胞を用いた炎症モデルにおいて、先行研究で報告している組み換えPPの抗炎症機能と同程度の抗炎症作用を改変型組み換えPPが示す結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度である2020年度は、液体クロマトグラフィーシステムを応用した精製法によって得られる高純度の改変型組み換えPPを用いた細胞接着活性および抗炎症機能、象牙質石灰化誘導能に関する in vitro での検討を目的としていた。進捗状況として高純度の組み換えPPを得る精製法の確立し、さらに改変型組み換えPPが in vitro において組み換えDMP-1と同様、細胞接着活性を有すること、組み換えPPと同程度の抗炎症作用を示す結果が得られている。一方で、象牙質石灰化誘導能の検討に関しては現在遂行中であることから当初の実験計画にやや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、in vitro での検討に関しては引き続き象牙質石灰化誘導能について検討を行っていく予定である。 また当初予定していた in vivo ラット覆髄モデルを用いた実験計画に関して、予備実験としてマウス歯髄炎モデルを用いた歯髄組織の炎症の程度の比較を行った所、手技的な難易度の高さに起因すると考えられる、同一のサンプル群内における炎症の程度に大きな個体差が生じることが見受けられ、炎症の程度の比較が困難となった。そこで改変型組み換えPPの生体内における抗炎症機能をより正確に検討する為には手技的な煩雑さが少なく、かつ炎症の評価をより簡便に行える手法が適当であると判断し、当初のin vivo における研究計画を一部変更し、in vivo 炎症モデルとして D-ガラクトサミン/LPS誘導性マウス敗血症モデルを用いた検討を行う計画を立案した。この敗血症モデルは手技が比較的簡便な腹腔内注射で実施が可能であり術者間や個体間での差異が生じにくく、さらに炎症の程度を生存率や、血中の炎症性サイトカイン濃度比較により評価することで、改変型組み換えPPの抗炎症作用の有無や程度をより客観的に検討することが可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
2020年度に遂行していた in vitro における象牙質石灰化誘導の検討に関して当初予定していた計画にやや遅れが生じており、こちらに関しては2021年度にも実験の継続が必要である。これらの実験に当初必要な予算として2020年度に計上していたものが使用されなかった為、2021年度にこれらの実験を遂行する為に必要な予算として、使用計画に変更が生じた。
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