2020 Fiscal Year Research-status Report
モノカルボン酸トランスポーターを標的とした歯周病性骨破壊の制御
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20K18515
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
今井 裕子 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (10849194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MCT / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
モノカルボン酸トランスポーター(MCT)は、細胞膜に存在し、乳酸、ピルビン酸、ケトン体など、分子内にカルボキシ基をひとつ有するモノカルボン酸をそれらの濃度および水素イオン(H+)濃度に依存して細胞内外に輸送する担体である。MCTは細胞のエネルギー代謝や細胞内pHの恒常性維持に寄与している。申請者らはMCTによるモノカルボン酸の輸送が破骨細胞の分化および骨吸収を制御するという、これまで知られていない新しい機能を持つことを発見した。 本研究では、炎症性骨破壊におけるMCTの役割を明らかにする。まず、炎症性サイトカインによるMCT1を制御する機序のスクリーニング探索を行った。MCT1の遺伝子発現が高い事で知られているマウス前駆軟骨細胞株ATDC5細胞を用いて予備検討を行った。歯周病で発現が上昇する炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1βを添加し2日後のMCT1の遺伝子発現変化をReal-time PCR法を用いて解析を行った。その結果、IL-1βの刺激によりMCT1の遺伝子発現上昇が認められた。IL-1βによるMCT1調節のシグナル伝達を解析した結果、NF-kB経路の活性化がMCT1の遺伝子発現を制御していることが確認できた。また、MCT1はグルコースが解糖系で代謝されて生じる乳酸やピルビン酸を輸送することから、グルコースなどの糖質が破骨細胞分化に及ぼす影響についても解析した。グルコース濃度を増加すると破骨細胞形成は促進した。 そのため、MCT1阻害が炎症性破骨細胞分化・活性化にあたえる影響の解析、歯周炎モデル動物の炎症性破壊におけるMCTの挙動や機能の解明を行う。今後、この研究に着手することでMCTを標的とした炎症性骨破壊の予防・治療法の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MCT1を制御する因子の探索を行った。MCT1の遺伝子発現が高い事で知られているマウス前駆軟骨細胞株ATDC5細胞を用いて予備検討を行った。歯周病で発現が上昇する炎症性サイトカインであるIL-1βを添加し2日後のMCT1の遺伝子発現変化をReal-time PCRにて解析を行った。その結果、IL-1βの刺激によりMCT1の遺伝子発現上昇が認められた。IL-1βによるMCT1調節のシグナル伝達を解析した結果、NF-kB経路の活性化がMCT1の遺伝子発現を制御していることが確認できた。また、MCT1はグルコースが解糖系で代謝されて生じる乳酸やピルビン酸を輸送することから、グルコースなどの糖質が破骨細胞分化に及ぼす影響についても解析した。グルコース濃度を増加すると破骨細胞形成は促進した。COVID-19による緊急事態宣言や大幅なカリキュラムの変更により進捗状況がやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、炎症性サイトカインによるMCT1の挙動やMCT1の制御機構に関して破骨細胞以外の実験系でスクリーニングを行った。その結果としてNF-kB経路にたどり着いた。そのため、骨髄マクロファージから破骨細胞分化時に炎症性サイトカインを添加してMCTの遺伝子発現およびNF-kB経路の活性化を確認する。この系にMct1,2,4の siRNAもしくは阻害剤を添加し、糖代謝の変化で生じる破骨細胞分化への影響がMCTを介しているかどうか解析する予定である。またMCTの遺伝子抑制および阻害剤を用いた炎症性サイトカインによる破骨細胞分化の変化を検討する。初代培養破骨細胞分化を採取し、MCTの詳細な機能を評価する。その後に、歯周炎モデル動物の炎症性破壊におけるMCTの挙動や機能の解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
第63回春季日本歯周病学会学術大会に参加したため。
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