2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18536
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡信 愛 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00806581)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特発性歯肉線維腫症 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性歯肉線維腫症は、原因不明の歯肉の線維性の増殖である。研究代表者はこれまでに、 薬物性歯肉増殖症のメカニズム解明に着手し、NR4A1ノックアウトマウスの第二臼歯に絹糸を結紮することによって歯周炎を惹起させると、絹糸を結紮した周囲の歯肉に歯肉増殖が生じることを確認した。特発性歯肉線維腫症は薬物性歯肉増殖症と極めて類似した臨床所見、病理組織像を示すことが知られている。したがって、特発性歯肉線維腫症は薬物性歯肉増殖症の発症と同様のメカニズムが関与していることが予想される。そこで研究代表者は、特発性歯肉線維腫症の発症に、歯周組織の炎症とNR4A1の一塩基多型(SNPs)が関与していると仮説を立てた。 本研究は、特発性歯肉線維腫症の治療のみならず、今後発展が期待されるオーダーメイド医療を促進するためにも意義のある研究である。 研究代表者はこれまでに、広島大学病院歯周診療科を受診する特発性歯肉線維腫症患者を初診時から診察してきた。歯周組織の炎症の指標であるPeriodontal Inflamed Surface Area(PISA)を計測し、口腔ケアの改善を中心とした歯周治療を行い、歯肉の炎症が軽減した状態で、歯周外科手術にて線維性の腫脹が認められる部位を切除し、患者の同意の上で研究サンプルとして採取している。 現在研究代表者が育児休暇取得中のため、実験が一時中断しているが、2021年10月の復帰後に速やかに再開し、研究を遂行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が育児休暇取得中のため、実験が一時中断している状況だが、復帰後に使用する実験サンプルはすでに確保されており、速やかに実験を再開できる環境である。
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Strategy for Future Research Activity |
広島大学病院歯周診療科を受診する患者のうち、特発性歯肉線維腫症と診断された患者のNR4A1のSNPsを解析する。方法として、患者から採取した静脈血を使用したサンガーシークエンスを行う予定である。まず、NR4A1遺伝子部位をPCR法にて増幅させ、次に熱変性によって一本鎖にし、DNAポリメラーゼとdNTPを添加して任意の部位まで伸長させ、NR4A1の多型を解析する。サンガーシークエンスは本研究のように特定の遺伝子のみを解析する場合に、安価で効率よく解析が行える利点がある。また、発症の条件として歯周組織の炎症が重要と考える。したがって、対象者の歯周組織の炎症の程度を評価する方法としてPeriodontal Inflamed Surface Area(PISA)もあわせて評価する。 特発性歯肉線維腫症と診断された患者から増殖した歯肉を採取し、ヒト歯肉線維芽細胞を分離、増殖させ、in vitroの実験に使用する。実験1で同定したSNPsをゲノム編集で正常な配列に変異させ、TGF-βを作用させたのち、DNAマイクロアレイを実施、SNPsの違いで変動のある分子を探索する。変動のある分子はNR4A1の周辺に存在する分子である 可能性が高い。そのため、パスウェイ解析を用いて関連する分子を探索する。 DNAマイクロアレイにより、複数個の分子の関与が予想される。そこで、リアルタイムPCR法を用いてそれぞれの遺伝子発現の変化を再度確認する。その後関与が想定される 分子に着目してコラーゲンの合成への影響を検討し、特発性歯肉線維腫症の創薬の標的分子を特定する。
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