2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K18536
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡信 愛 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (00806581)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 特発性歯肉線維腫症 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに薬物性歯肉増殖症のメカニズム解明に着手し、NR4A1ノックアウトマウスに歯周炎を惹起させると、歯肉増殖が生じることを確認している。特発性歯肉線維腫症は薬物性歯肉増殖症と極めて類似した臨床所見、病理組織像を示すため、同様のメカニズムが発症に関与していることが予想される。 まず、in vivoでNR4A1が歯肉増殖に与える影響を詳細に観察し、その後ヒトを対象とした研究を行う計画とした。ヒトから採取するサンプルは、歯肉切除術によって切除された増殖歯肉を使用した。採取した歯肉から得た線維芽細胞を使用して、in vitroで遺伝子発現の変化を解析することとした。 結果を以下に示す。 ①上顎両側第二臼歯に5-0絹糸を結紮し、5週間飼育した後、絹糸結紮部周囲の歯肉を観察したところ、NR4A1ノックアウトマウスではWTマウスと比較し、顕著な歯肉腫脹を認めた。②WTマウスと比較して、NR4A1ノックアウトマウスのHE染色像では顕著な結合組織の増大を認め、シリウスレッド染色にて、結合組織内部には密なコラーゲン線維束が観察された。③特発性歯肉線維腫症患者と慢性歯周炎患者の間に、NR4A1の発現に有意差を認めなかった。④組織線維化に関わると報告のあるインテグリンα8、インテグリンα11、トランスグルタミナーゼ2(TGM2)に発現の上昇傾向を認めた。 以上の結果から、様々な遺伝子が特発性歯肉増殖症の発症あるいは増悪に関わっている可能性が示唆された。今後はNR4A1だけでなく、インテグリン、TGM2などにも焦点をあて、その関係性について検討を行うことが、特発性歯肉線維腫症のみならず、種々の線維化疾患のメカニズムの一端を解明することにつながると考える。
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