2023 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原性バイオフィルム形成におけるカプノサイトファーガ属菌の細菌運搬機構の役割
Project/Area Number |
20K18545
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
喜田 大智 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70755032)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Capnocytophaga ochracea / 細菌運動 / IX型分泌機構 / プロテオーム解析 / バイオフィルム / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
Capnocytophaga ochracea はデンタルプラーク中に存在し、滑走能を有する細菌である。Capnocytophaga 属菌のひとつであるC. gingivalis は、Fusobacterium nucleatum などの非運動性菌を運搬する。これには、滑走運動関連タンパク質SprB など、IX 型分泌機構(T9SS)により菌体表層に分泌されるタンパク質が関与すると推測される。Capnocytophaga 属菌は、これによりデンタルプラークの形成範囲を広げている可能性がある。しかし、この非運動性細菌を運ぶ能力がC. gingivalis と同じくCapnocytophaga 属に属する口腔内細菌であるC. ochracea でみられるか、その能力にどのタンパク質が関与するかは不明である。 本研究はC. ochracea に他の口腔内細菌を付着させた際の動きならびにそのメカニズムを明らかにすること、その動きが歯周病原性バイオフィルム形成に与える影響を確認することを目的とした。 Coch_1586 は、C. ochracea T9SS を介して細胞外へ分泌されると推測されるタンパク質のひとつである。2023年度は、前年に引き続き、Coch_1586 の細胞内外での局在をウエスタンブロットで確認するために、使用する抗Coch_1586 抗体の濃度等、反応条件の検討を行った。また、C. ochracea が非運動性細菌を運ぶ様子を観察するための条件の検討を行った。これらは本年度中には完遂できなかったため、次年度に継続して行うこととした。これらに加え、Coch_1586、SprB 以外のT9SS により分泌されるタンパク質を引き続き探索することとした。そのためにT9SS 構成タンパク質SprT をコードする遺伝子の欠失株と野生株の培養上清中のタンパク質の抽出を試み、完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Coch_1586 の細胞内外での局在をウエスタンブロットで確認するための抗体濃度等の反応条件の検討に時間がかかり、実際に確認するところまで研究をすすめることができなかったため。また、C. ochracea が非運動性細菌を運ぶ様子の観察や、それにどのタンパク質が関与するかを明らかにすることが未だできていないため。それらに加えて、T9SS 構成タンパク質SprT をコードする遺伝子の欠失株と野生株の培養上清中のタンパク質発現量の比較解析をプロテオーム解析により行う予定であったが、それが完了できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
抗Coch_1586 抗体を用いたウエスタンブロットの反応条件が決定でき次第、Coch_1586 の細胞内外での局在をそれを用いて確認する。結果によっては、本タンパク質がSprB とともにC. ochracea の非運動性細菌を運ぶ動きに関与するかどうか確認する。また、Coch_1586、SprB 以外のT9SSにより分泌されるタンパク質を引き続き探索する。そのためにT9SS 構成タンパク質SprT をコードする遺伝子の欠失株と野生株の培養上清中のタンパク質発現量の比較解析をプロテオーム解析により行う予定である。 本年度の途中までにC. ochracea が非運動性細菌を運ぶ様子を観察することができない場合、C. ochracea 単独の運動メカニズムをより深く理解できるような研究を行う。具体的には、C. ochracea 単独の動きに関与すると推測される遺伝子、タンパク質を探索する。その後、遺伝子欠失株を作製、形質を確認する。また、動きをリアルタイム、もしくはそれに近い状態で観察できる条件をさらに検討することとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由として、1. Coch_1586 の細胞内外での局在をウエスタンブロットで確認するための抗体濃度等の反応条件の検討に時間がかかり、実際に確認するところまで研究をすすめることができず、関連する器具ならびに消耗品を購入しなかったため。反応条件が決定でき次第、関連器具、消耗品の購入に研究費を使用する。2. C. ochracea の非運動性菌の運搬を確認できなかったため。この運搬の動きが確認できた場合、さらに詳細な観察を行うために複数の菌を染め分ける必要があり、それに用いる消耗品の購入等に用いる。 これらとは別な使用計画として、T9SS 構成タンパク質SprT をコードする遺伝子の欠失株と野生株の培養上清中のタンパク質発現量の比較解析のためのプロテオーム解析を外部委託する予定である。その委託費として使用する。またこれと前年度までに得たプロテオームデータの中でバイオインフォマティクス解析が必要と判断されたものがでた場合、その解析を外部委託するために使用する。
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