2020 Fiscal Year Research-status Report
インプラント周囲炎の再生と予防ー細胞増殖因子と表面性状ー
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20K18552
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井川 貴博 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (20780290)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インプラント周囲炎 / 細胞増殖因子 / 成長因子 / 抗菌作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯を失った部位への補綴治療として、インプラント治療は成功率、生存率、患者の満足度の高い治療である。一方で、細菌感染によって引き起こされるインプラント周囲炎はインプラントの成功率を下げる最も大きな要因であり、現在では効果的な治療法が存在しないためインプラントの予後に大きく影響を及ぼす。つまり、①インプラント周囲炎に対する効果的な治療方法、②インプラント周囲炎を予防するインプラントシステム、は今後のインプラント治療において重要な課題である。 インプラント周囲炎を予防するインプラント表面性状の開発も進められてきた。特にインプラント周囲炎の主な原因は細菌感染であるため、抗菌作用のある材料が必要と考えられている。そこで申請者はカルシウムに類似したストロンチウム(Sr)に着目した。これまでSrは骨芽細胞分化を促進・活性化する一方で破骨細胞分化を抑制し骨形成促進作用するとの報告がされているが、抗菌作用に関しては未だに不明である。現在、インプラント表面にSrを安定した状態で定着させる方法について検討を行っている。 次に、現在キトサンブラシが注目されている。キトサンには抗菌作用があるため、インプラント周囲炎の治療に対して効果がある可能性が示唆されている。キトサンブラシを使用したインプラント周囲炎に対する効果について、細胞レベル・動物実験レベルと並行して、臨床応用に向けて実験計画を予定している。また再生治療の骨補填材として吸収性コラーゲン材料が臨床でも応用され始めているが、組織学的な効果についての報告は少ないため、臨床実験を裏付ける組織学的な評価に関しての実験を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
国外の研究者と共同で研究を進める予定であったが、コロナ禍のため会議のみで具体的な実験の予定を立てることが現状難しい状況である。その代わりに、キトサンブラシを使用したインプラント周囲の炎症に対する予防と治療効果について検討を行えるように、準備を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
インプラント表面を異なる濃度の水酸化ストロンチウム(0.1mM, )を使用する。寒天培地を使用し、拡散試験を行う。使用する細菌としてはEscherichia coli, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus mitis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Porphyromonas gingivalisの5種を予定している。濃度の違いによる阻害率の違いおよびバイオフィルム生存率をモニタリングし、Srの抗菌効果と最適な濃度を調べる。 次に、Ti表面をSrでコーティングしたTi-Srプレートを用いて行う。対照群はTiプレートのみとする。プレート表面の経時的なバイオフィルム増殖率の違いを調べる。上記と同様に、Ti-SrプレートとTiプレートを用いる。細胞混濁液に浸漬させ細胞培養を行い、細胞増殖数の変化・細胞分化マーカーの発現を調べる。培養細胞上清中の分化マーカーとして、Osteonectin、Osteopontin、Osteocalcin、Type1 Collagen、ALP活性をELISA法にて測定する。また使用する細胞としては、株化細胞としてMC3TC-E1細胞、初代培養細胞としてイヌ骨膜由来細胞を用いる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた実験計画が白紙に近い状態になっている。その代替として、新たな実験を計画・準備を行っている。
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