2023 Fiscal Year Research-status Report
生体活性を付与したジルコニア開発による持続可能なインプラント治療確立への挑戦
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20K18570
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 達郎 北海道大学, 歯学研究院, 招へい教員 (70750933)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スラリー埋没加熱処理法 / ジルコニア / ハイドロキシアパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
イットリア安定型ジルコニアをφ0.9mm×8mm Lに加工し、熱処理のみ施したジルコニアおよび、スラリー埋没加熱処理を施したジルコニアを実験材料として用いた(加熱条件は熱処理、スラリー処理ともに加熱温度950℃、加熱時間2時間)。10週齢雄性Wistar系ラットの左側大腿骨の長軸方向と垂直方向に直径0.9mmのインプラント窩を2本形成し、スラリー埋没加熱処理したジルコニアもしくは熱処理のみのジルコニアを2本埋入した。埋入2および8週後に、埋入した試料を周囲組織とともに摘出、脱灰標本を作製し、H.E染色およびTRAP染色を施し、病理組織学的に検索を行った。 2週後において、両試料ともに、ジルコニア周囲組織に血球成分を多く認め、埋入時の侵襲による炎症反応が認められた。また、ジルコニア周囲は線維性組織で覆われ、一部に幼弱な軟骨様組織の形成を認めた。一方、スラリー処理したジルコニア周囲においては、熱処理のみのジルコニアに比べてより多くの軟骨様組織と骨様組織の形成を認めた。 8週後においては、両試料ともに埋入窩周囲に成熟した新生骨の形成を認めた。新生骨はジルコニアと直接接していたが、一部線維組織に覆われ、直接接していない部分を認めた。 2週後においては、予想した通りスラリー処理を施したジルコニア周囲において、熱処理のみのジルコニアに比較して、より多くの新生骨形成が認められた。一方、8週後においては両試料ともに成熟した新生骨の形成を認めたが、新生骨とジルコニアが直接接していない部分が生じていた。骨形成量、骨接触率ともに両試料に差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度は新型コロナの影響により動物実験室の使用が制限されていたために、研究の進捗に遅れが生じた。また、同年に北海道大学から金沢大学に異動したが、新型コロナの影響により金沢大学における動物実験に関する講習会の開催が制限されていたため、さらなる遅れを生じた。 その後も、新型コロナの流行により臨床業務(病院外来業務)のエフォートが増加したものの、教育のエフォートに増減がなかったため、その分研究のエフォートが減少したことによりさらに研究の遅延が生じている。 令和5年度は予定通りに実験を遂行できたが、これまでの遅延を解消できていないため、進捗は遅れたままとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験:スラリー処理ジルコニアおよび熱処理ジルコニアワイヤーをラットの左側大腿骨に埋入し、2週後および8週後に周囲組織とともに試料を摘出する。摘出した試料にVillanueva bone染色を施し、非脱灰標本を作製し、組織計量学的検索を行う。 細胞培養実験:スラリー処理ジルコニアおよび熱処理ジルコニアディスク上にヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC-BM)を播種、培養し、評価項目は次の通り行う。 (1)細胞接着能の評価:1日および3日間培養後、WST-1にて評価する。(2)細胞分化能の評価:1週および2週間試料上で培養後、骨関連タンパクとしてアルカリフォスファターゼ活性をLabAssay ALPにて計測する。さらに、骨関連遺伝子としてCbfa1およびオステオポンチン(OP)、オステオカルシン(OC)をRT-PCRにて計測する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により研究の遅延が生じたため。R5年度は予定通り実験を実施できたが、それまでの遅延分の解消には至っていないため、次年度使用額が生じた。今年度培養実験用の試薬の購入、動物実験にて用いるラットの購入、試薬の購入、標本作製および消耗品の購入費として使用を計画している。
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