2020 Fiscal Year Research-status Report
歯周組織再生を促進する医用無機イオン徐放型インプラント表面処理材の創製
Project/Area Number |
20K18572
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 仁 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30771513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医用材料 / 歯科インプラント / ジルコニア / 表面処理 / リン酸ジルコニウム / 生体微量元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、層状構造を持つナノ複合材料薄膜をジルコニア表面に形成する手法を確立し、その層間に生体微量金属を導入する手法で、生体微量元素が徐放可能な医療機器用材料の構築をめざす。さらに、材料から徐放された無機イオンに対するヒト由来細胞の応答について知見を集積し、自己組織修復能力を促進する生体材料を設計するための指針を得る。本年度においては、α-型リン酸ジルコニウム(α-ZrP)を骨格としたナノ複合材料の合成手法の確立、生体微量元素の導入と徐放性評価、ジルコニア基板表面へのリン酸化合物の形成手法の探索を目的として研究を進めた。 α-ZrPは、Zr原子とリン酸基からなる層状骨格が積層した構造を持つ。この構造を利用すれば、ジルコニア系材料であっても無機イオンや薬剤の徐放性を付与することが可能となる。オキシ塩化ジルコニル(ZOC)とリン酸を出発原料にして、水熱処理によりα-ZrPを合成した。さらに、還流法によってα-ZrPに、骨再生を促す因子としてβ-グリセロリン酸を導入することに成功した。これらの粒子を担持した高分子基板の表面でヒト脂肪由来幹細胞を培養した際、細胞毒性を示すことなく、ヒドロキシアパタイトの表面に比べて有意に高い細胞増殖性を示すことを明らかにした。ZOCとフェニルホスホン酸を出発原料としたソルボサーマル処理により、フェニル基で層間が修飾されたZrP(ZrP-Ph)粒子の合成に成功した。ZrP-Ph粒子にコバルト(Co2+)イオンを導入した際、それらが3週間に渡って継続的に徐放可能であった。ジルコニア基板表面の層状リン酸塩の形成手法についても検討を行い、リン酸含有水溶液に浸したジルコニア基板を水熱処理もしくは炭酸ガスレーザー照射することで、リン酸ジルコニウム薄膜の形成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、基盤となる層状構造を持つナノ複合材料について、合成手法を確立するとともに、薬剤や無機イオンの導入および徐放性の評価について主に進めてきた。本研究課題での重要な材料設計である、ナノ複合材料の層間への生体微量元素および薬剤の導入手法を確立できたことで、当初目標であった徐放性の評価に加えて、有機修飾構造の制御による無機イオン導入量や徐放特性の制御に関する知見も得られている。さらに、次年度に予定していたヒト由来細胞を用いた細胞親和性の評価についても一部進行しており、本研究におけるナノ複合材料の有効性を示す結果が徐々に得られている。ジルコニア基板上で材料を薄膜として形成することについても、水熱処理ならびに炭酸ガスレーザーを用いた液相プロセスの2つの手法で達成している。以上のことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、今後は本年度にて確立されたナノ複合材料を基盤材料として用い、リン酸緩衝液、血漿中の無機イオン濃度を模倣した水溶液、細胞培養培地に浸すことでイオン徐放のメカニズムを解明する。さらに、生体微量元素や薬剤を導入したナノ複合体薄膜について細胞培養試験ならびに大腸菌を用いた抗菌試験を実施し、細胞に対する活性化効果と抗菌性を評価する。
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