2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18580
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
吉田 光孝 東京歯科大学, 歯学部, 臨床講師 (20755029)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / がん / バイオマーカー / 人工ペプチド / 分離カラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、がんの転移と関連する悪性のエクソソームを分離することである。そのための手段として、エクソソームの表面の性質(発現している蛋白)に注目した。 がん細胞は、転移に先立ち悪性のエクソソームを体液中へと放出する。放出されたエクソソームは体液中をめぐり、他の細胞(臓器)へと取り込まれる。そして、取り込んだ細胞内に遺伝情報を伝達し、がん細胞が転移のしやすい環境をつくりだす。そのため、悪性度の高いエクソソームを体液中より分離することができれば、診断・治療に役立つことは間違いない。 これまでの研究成果として、培養細胞上清由来のエクソソーム表面には、がん細胞と同様の蛋白(EpCAM分子)が強く発現していることを確認した。更に、基盤平面上においてはエクソソーム表面にEpCAM分子に対するペプチドを結合させることに成功した。 そこで、本研究ではこの技術をカラムに応用することを目標とした。最終的には、様々な性質のエクソソームをカラムに通して、悪性度の高いエクソソームのみを回収する技術を構築したい。 まずは、カラムに充填する最適な材料(担体)の検討をおこなった。担体として、一般的に用いられているシリカゲルやポリスチレンなどについて複数の種類・粒子径を検証した。粒子によってはコーティングの際に変形してしまうものもあり、条件の至適化に多くの時間を要した。これまでの検証では、シリカゲルが操作性や作業効率を考えたうえで最適であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、カラムに充填する最適な材料(担体)の検討を中心におこなってきた。担体材料については、様々な種類や粒子径のものが販売されている。 本研究では、直径 100 nm程のエクソソームをターゲットとしているために表面の凹凸が大きいと、エクソソームが粗面にひっかかってしまう。しかしながら、表面が滑沢な球体では結合力が強力でないと親和性を利用した吸着は得られない。本研究の要点として、抗体でなくペプチドを利用した吸着であることがあげられる。抗体を回避する理由は、強すぎる結合力にある。抗体で捕獲した物質を解析する際には、抗体との結合を解除するために酸性、高温などの条件を強いることがある。その際の変性が問題としてあげられる。その点、ペプチドを理由すれば、結合力の調整や大量合成が可能となり利点が多い。そのうえで、表面にある程度の凹凸があることが弱い結合力を利用した吸着において重要になると考えられる。 担体の選定をする際にもエクソソームを大量に使用したため、細胞の大量培養などが必要となり多くの時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
担体材料の選定については概ね完了した。今後は、実際にエクソソームを性質ごとに分離することを目標としている。実験に使用するエクソソームについては、細胞を大量に培養して回収された上清より精製する。コロナ禍の懸念事項として、細胞の培養が中断することなどがあげられる。
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