2020 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜線維の組織化が細胞外微小環境として幹細胞分化に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20K18595
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
井田 貴子 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (60790285)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歯学 / 歯根膜 / Ⅴ型コラーゲン / 幹細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯根膜組織の維持・再生において組織幹細胞が重要な役割を果たしているが、その分化機構は未だ不明である。幹細胞の分化には細胞外基質自身が活性物質として機能するだけでなく、その機械的特性が細胞外微小環境として影響を及ぼすことが多くの正常組織や病態において示唆されている。線維型マイナーコラーゲンの一種であるⅤ型コラーゲンは、コラーゲンの豊富な結合組織において線維の組織化に寄与し、その機械的特性に影響を及ぼすことが知られている。Ⅴ型コラーゲンは、歯根膜組織においても豊富に存在することから、線維の組織化を介して、歯根膜の組織幹細胞の維持と分化に影響を及ぼしている可能性が高い。これまでの先行研究において、幹細胞における細胞外基質の2次構造を起点とした細胞機能の制御メカニズムについて明らかにしてきたが、その詳細な分子メカニズムについては未だ不明である。 本研究では、細胞外微小環境を制御する因子としてのⅤ型コラーゲンが幹細胞分化制御に及ぼす影響を解明することを目指す。現在、マウスの歯根膜由来細胞を用いて、Ⅴ型コラーゲンが細胞外基質の機械的特性に及ぼす影響について検討を行っている。具体的には、4週齢雄性C57BL/6Jマウスより上下顎臼歯を抜歯し、得た歯根膜細胞を用いてsiRNAによりCol5a1遺伝子をノックダウンした後に2週間培養し、コラーゲン線維を得たのちコラーゲン修飾酵素であるLysyl Oxidase (LOX)およびⅤ型コラーゲンと会合体を形成するⅠ型コラーゲンの遺伝子の発現をモニターし、Col5a1の阻害がLOXおよびⅠ型コラーゲンに及ぼす影響を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
siRNAによるCol5a1遺伝子ノックダウンの条件設定に時間を有しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅴ型コラーゲンによる細胞外基質の機械的特性の変化が幹細胞分化に及ぼす影響の解析については、引き続き来年度に行う予定とし、該当分の研究費は繰り越すこととした。さらに、当初の予定であった、Ⅴ型コラーゲンが細胞外基質の機械的特性に及ぼす影響に関する解析を進める。まずはCol5a1遺伝子をノックダウンして得た細胞外基質について、その成熟度はPicrosirius red染色を用いて評価し、形態については電子プローブマイクロアナライザー(EPMA: Electron Probe Micro Analyzer)を用いて観察する。さらにその細胞外基質上での幹細胞分化を解析する予定である。歯根膜幹細胞の一定量は骨髄に由来することから、細胞培養系での解析に用いる幹細胞には骨髄由来間細胞 (BMSC)を用いる。また、これまでの先行研究において幹細胞分化に影響を及ぼす可能性のあるフェノール化合物との相互作用についても解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前述の通り、現在Ⅴ型コラーゲンが細胞外基質の機械的特性に及ぼす影響の解析を行っており、今年度は動物購入および動物実験実施には至っていない。次年度使用額は動物購入およびその維持費用に使用する予定である。
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