2022 Fiscal Year Research-status Report
デジタルデータを利用した即時下顎再建法に関する研究
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20K18610
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
勅使河原 大輔 埼玉医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70779016)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 下顎骨再建 / 可撤性義歯 / 即時義歯 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度より行った再建顎と装着義歯の機能および形態評価、硬性再建後の下顎骨形態と術後に装着した可撤性有床義歯の重ね合わせにより、再建顎堤形態に装着し得る義歯(床縁)形態が概ね明らかとなった。術後のデンチャースペースは,軟組織の形態の影響を受けることから,顎骨再建においては切除範囲だけでなく皮弁の種類,配置,さらには術後の創治癒における瘢痕化や脂肪化などの経時的な形態変化が影響を及ぼす。術前シミュレーションにおいて軟組織を考慮に入れることは困難であり,多因子により変化しうる義歯床形態を事前に予測することは困難であった。これまでの分析結果により,術後の口腔底形態は術直後から術後早期において術前の形態に影響を受けていると考えられた。このことは,術前の口腔内形態より製作した義歯を術中のサージカルガイドとして使用するだけでなく,即時義歯として術直後から利用し得ることが示された。本研究成果については2022年6月宮崎で開催された第39回日本顎顔面補綴学会総会・学術大会にて下顎再建に対する即時義歯の適応として報告した。さらに,術前シミュレーションについて,当初の研究計画では実態模型を必要としていた工程(下顎骨区域切除、骨弁配置シムレーションおよびそれぞれの骨切りガイドの製作)を汎用3Dソフトウェア(3D builder、 Microsoft)上で行うことが可能となった。これまでの形態比較には、手作業での術前シミュレーションを行うために3Dプリンターで出力した実態模型を再度デジタルデータ化する必要があり、試料作成に煩雑な操作を必要としていた。さらに術前形態のデータは3Dプリンターの精度だけでなく、3Dスキャナーの精度も影響を受けていることが考えられた。術前シミュレーションにより得られた形態を直接取り扱えるようになったことで、術後データとの形態比較の誤差に対する信頼性が確保でき、より定量的な検証が可能となったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
適切な再建顎堤および義歯の形態を決定する目的で,下顎骨区域切除および硬性再建後の義歯装着患者を対象として,機能評価(グミゼリーを用いたグルコース溶出量計測による咀嚼能力検査(グルコセンサーGS-Ⅱ、ジーシー)、感圧フィルムを用いた咬合力分析(デンタルプレスケールⅡ))と形態評価(下顎骨モデル、歯列モデルおよび義歯モデルをソフトウェア(3D builder、 Microsoft)上で重ね合わせ、義歯装着時の再建顎堤と義歯の装着時の位置関係を再現し支持域占める割合を評価したもの)を行った。これらの評価因子に関して,明らかな相関関係は認められなかった。そこで,新たな形態評価値として導入した3DFEAによる皮弁の被圧変位量を考慮した義歯の挙動分析を加えた。分析モデルの作成にこれまで得たモデルの流用が出来ず,応力分析に至っていない。 一方で,下顎骨再建の術前シミュレーションは,当初の研究計画では実態模型を必要としていた工程(下顎骨区域切除、骨弁配置シムレーションおよびそれぞれの骨切りガイドの製作)を汎用3Dソフトウェア(3D builder、 Microsoft)上で行うことが可能となった。これまで手作業でのシミュレーションを行っていたため、実態模型の使用が必須であった。実態模型は術後の顎骨形態との比較によるデータ解析に利用していたが、模型の精度に関して3Dプリンターの出力精度や3Dスキャナーの精度がデータの比較制度に影響を及ぼすことが考えられた。術前シミュレーションのデジタル化により,再建下顎骨モデルデータを実態模型に出力することなく術前後の形態比較を行うことができるようになったため,デジタルシミュレーションの確立および標準化を目的とした,術前後の形態(実態模型およびデータ)の比較によるシミュレーション精度の検証を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
再建顎堤および装着義歯の評価について初年度と同様にデータ収集および解析を行う。シミュレーションの精度比較について、術前および術後の撮影されたCT画像から下顎骨部分のDICOMデータを抽出する。データ変換ソフト(Mimics base、 マテリアライズジャパン)にて、下顎骨のポリゴンモデルを作成する。歯科用3Dスキャナー(CS3600、 Trophy Solution)を用いて歯列および義歯形態のポリゴンモデルを作成する。取得した下顎骨モデル、歯列モデルおよび義歯モデルをソフトウェア上で重ね合わせ、義歯装着時の再建顎堤と義歯の装着時の位置関係を再現し、デジタル画像解析による形態分析を行う。各々の機能評価値と形態評価値に対して統計解析ソフトウェア(IBM SPSS ver.25 statistics、IBM)を用いて相関分析を行い、再建顎堤および装着義歯の形態評価を行う。 形態評価因子として新たに加えた再建顎堤(皮弁軟部組織)の容量を考慮した義歯の挙動に関する3DFEAについて、解析モデルの作成(義歯および生体組織(骨および周囲軟組織)のそれぞれの構造を構成要素ごとの材料特性を付与した複合体として構築した下顎骨に義歯を装着する)および解析(下顎および義歯の界面条件を非固着とし義歯咬合面接触点への荷重下での義歯の挙動(最大変位量、支持歯槽骨領域への応力集中領域)を評価)を行う予定である。
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Causes of Carryover |
成果報告に関して課題申請当初,海外での発表(American Academy of Maxillofacial Prosthodontics, 米国)予定していたものの,新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の影響により参加を断念したことから、これらに関わる費用については使用予定額の変更が生じた。
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