2022 Fiscal Year Research-status Report
オーラルフレイル機序解明に向けた顎口腔系運動器のマルチスケール解析
Project/Area Number |
20K18616
|
Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
笠原 正彰 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60779776)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | オーラルフレイル / 骨質 / 生体アパタイト / 結晶配向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔機能の低下を総称する「オーラルフレイル」は、フレイルの重篤化を惹起する因子として知られている。口腔機能低下は咀嚼筋の筋機能減退に伴い顎骨の力学機能が低下し、それぞれの構造形態に影響が生じると考えられるが、その相関性は不明である。そこで本申請課題は、口腔機能低下の機序解明のために、顎口腔系運動器の構造と機能の関連を明らかにすることを目的とする。そのために、咀嚼筋の腱-骨付着部に焦点を当て、1)当該部位におけるマルチ(マクロ・ミクロ・メゾ・ナノ)スケール構造解析を行い、形態学的見地から各スケールの構造特性と筋機能の関連を解明している。次に、実験動物を用いて2)筋機能圧による荷重の大きさが顎骨の形態・構造へ及ぼす変化を調べ、機能学的見地から荷重の影響による顎骨の経時的変化を観察している。 本年度は1)においてヒト有歯顎・無歯顎の咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)の腱-骨付着部の骨密度、生体アパタイト結晶配向性、ヤング率のデータ解析を行い、各計測結果の関連性を検討した。また、組織観察により関心領域部位の腱の付着様式の調査を行った。2)は筋機能圧の異なる実験動物モデル(Wistar系ラットを使用した、荷重(無処置)・低荷重(ボツリヌス菌毒素注入モデル)・無荷重(下顎神経切断モデル)による比較モデル)の一部の筋ー腱ー骨付着部における骨密度評価を行い、各モデルの比較検討を行った。今後は1)、2)で得られた結果を基に口腔機能維持・向上に向けた方略の立案、オーラルフレイル機序解明のための基礎的基盤を確立、提案を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も昨年に引き続き、上半期は新型コロナウィルスの影響による研究活動に制限が一部生じた。また、計測機器(エックス線回折装置やマイクロCTなど)の故障、不具合により予定試料数の測定を行う事ができなかったため、進捗に影響を及ぼしている。一方で、ナノインデンテーション解析は概ね終了したため、関心領域部位の骨強度と骨質の関連を検索している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も、社会情勢を考慮に入れつつ、昨年度までに行う事ができなかった研究課題を行う予定である。具体的には、昨年度は関心領域部の組織観察を一部行ったが、今年度はコラーゲン線維走行異方性解析を行う予定である。その手段として、多光子励起位相差顕微鏡を用いた第二光調波発生(SHG)イメージングを用いて、コラーゲン走行異方性を評価する。 また、測定機器の不具合のため実験動物を用いた研究に遅れが生じている。そのため、本年度は各実験モデルの骨密度の定量評価を引き続き行う。これらの評価が終了次第、動物モデルにおいてもBAp結晶配向性の測定による骨質評価、ナノインデンテーション法による強度の評価を行う予定である。両解析が終了次第、有歯顎と無歯顎の力学環境の差異を明らかにする。また、各咀嚼筋の付着部の比較を行い、局所的な力学環境が及ぼす顎骨の構造特性の解明を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
一昨年、昨年度に引き続き新型コロナウィルスの影響に基づく、研究進捗への支障と、コロナウィルス蔓延による出張制限のため、国内・海外学会発表に伴う必要な経費の使用ができなかったため。また、マイクロCTの不具合により、CT撮像後に行う予定の試料破壊を伴う測定や評価を行うことが困難であることや、走査型電子顕微鏡およびエックス線回折装置においても不具合が生じており、機器に関する消耗品の消費状況に影響を及ぼしたことが原因としてあげられる。
|
Research Products
(2 results)