2021 Fiscal Year Research-status Report
Age related modulation on the mechanism of onset of mechanical hyperalgesia in the oral cavity
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20K18619
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浦田 健太郎 日本大学, 歯学部, 助教 (60754398)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 三叉神経節 / マクロファージ / M1 / M2 / CCL2 / 加齢 / 口腔粘膜 / 機械痛覚過敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢が口腔粘膜の機械痛覚過敏発現機構に及ぼす影響を解明するために,一次ニューロンである三叉神経節(TG)のマクロファージ性疼痛調節機構に着目し加齢の影響を検討した.老化促進マウス(SAMP8)の口蓋粘膜に切開を加え,口腔粘膜損傷モデルを作成した.このモデルを正常発育マウス(SAMR1)と比較し各実験に使用した.切開部への機械刺激に対する逃避閾値を計測した結果,加齢により口蓋部の機械痛覚過敏は増強する事が明らかとなった.SAMP8の機械痛覚過敏が最も増強した3日目とSAMP8のみが機械痛覚過敏を発症している14日目を対象日時として,免疫組織学的解析を行った結果,TG2枝領域の活性化マクロファージマーカーであるIba1の発現増加は加齢により増強する事が明らかとなった.マクロファージの炎症性(M1型),抗炎症性(M2型)への極性変化を検討した結果,切開後3日目及び14日目では,加齢によりM1型の発現増加が増強し,M2型の発現は加齢による発現への影響を認めなかった.また,加齢がマクロファージ由来の炎症因子であるCCL2と抗炎症因子であるTGF-βの発現に及ぼす影響を検討した結果,切開後3日目及び14日目では,M1放出性のCCL2の発現は加齢により増強する一方で,M2放出性のTGF-βの発現は,3日目及び14日目で加齢による有意な変化を認めなかった.さらに行動薬理学的解析としてSAMP8切開群に対し,CCL2の中和抗体をTGに持続的に投与した結果,CCL2中和抗体の溶媒を投与した群と比較して口蓋粘膜の切開後の機械痛覚過敏が有意に抑制され,SAMP8非切開群にTG中へのCCL2を投与すると口蓋粘膜の機械痛覚過敏が有意に増強した。以上より,加齢によるTGでのマクロファージのM1型への亢進に由来するM1放出性CCL2の発現増加が,口腔粘膜の機械痛覚過敏の増強に関与すことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度内に予定していた,行動薬理学的解析は,口蓋粘膜の機械痛覚過敏の増悪に関与する因子,すなわちCCL2の関与を明らかにすることができた為,終了を得た。 しかしながら,当初の予定ではマクロファージ由来の炎症性因子としてTNF-αを,またマクロファージ由来の抗炎症性因子としてIL-4をターゲットとしており,これに伴いレセプターはTNFR1とIL-4Rの解析を予定していたが,研究の遂行中に予定因子の同定がうまくいかなかったため,CCL2およびTGF-βにターゲットを変更した.これにより研究遂行上のロスタイムが生じ,三叉神経節細胞の興奮性の加齢変化解析を現在行っていることから,令和3年度中に研究終了を得ることができなかった。よって当初の予定よりもやや遅れている区分とし,延長申請を得させて頂いた令和4年度中に予定行程を完了させる運びとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において当初計画していた実験は,令和3年度に予定していたTG細胞の興奮性の加齢変化の解析を残し,解析まで完了している.口蓋粘膜切開後の機械痛覚過敏の増強に対する加齢の影響をより明確にするために,本研究モデル動物の三叉神経節細胞の機械痛覚過敏発症時の興奮性に対する加齢変化の解析を現在行っており,研究代表者のみでなく,研究協力者である大学院生においても細胞の興奮性記録が可能となるように,研究手法を実技を通して習得および確実にするための訓練を合わせて行っている.しかし,細胞の興奮性記録において,想定の興奮性変化を記録できない可能性も考えられる。この場合,本研究から明らかとなった,CCL2を三叉神経節に直接投与した後に,疼痛発現時に三叉神経節の細胞興奮に関与する事が明らかである受容体の発現変化を解析する事で,興奮性変化の実態の要素を補填したいと考えている。すなわち,ナトリウムチャネルであるNav1.8の発現変化を免疫組織化学的に解析し,疼痛発現にダイレクトに関与する経路の解明を行いたい。このための手法は、これまでの実験過程で行った手法と同様であることから,この補填策の実行可能性は十分と考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度内に予定していた,行動薬理学的解析は,口蓋粘膜の機械痛覚過敏の増悪に関与する因子としてCCL2の関与を明らかにすることができた為,終了を得た。しかし,当初の研究計画では,マクロファージ由来の炎症性因子としてTNF-αを,またマクロファージ由来の抗炎症性因子としてIL-4をターゲットとしており,これに伴いレセプターはTNFR1とIL-4Rの解析を予定していたが,研究の遂行中にこれらの予定因子の同定がうまくいかなかったため,CCL2およびTGF-βにターゲットを変更した.従って,研究遂行上のロスタイムが生じ,三叉神経節細胞の興奮性の加齢変化解析を現在行っていることから,令和3年度中に研究終了を得ることができなかった。また,参加を予定していた学会について、コロナ情勢により参加を見合わせた影響を受け,旅費が不要となったことから残金が生じた.次年度への繰越金は助成金と合わせて,令和4年度に引き続き行う予定の,三叉神経節細胞の興奮性の加齢変化解析と,この解析がうまくいかなかったときの対応として予定する,三叉神経節内へのCCL2の持続投与によるNav1.8発現に対する免疫組織化学的解析実験時における,動物と抗体等の購入に使用する計画としたい。
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