2020 Fiscal Year Research-status Report
軟組織シーリングインプラントアバットメントによる歯周組織再生
Project/Area Number |
20K18622
|
Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
佐藤 絢子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 医員 (70803998)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 細胞シート / インプラント / アバットメント |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科インプラント治療は、天然歯と比べると接着能や防御能は歯周組織よりも弱く、細菌が侵入しやすいと考えられている。インプラント周囲疾患の防御を目的にインプラントの粘膜貫通部に相当するアバットメントに歯肉の接着(以下mucointegrationとする)を誘導し、インプラント周囲組織の再生を行う。 1.歯肉由来上皮細胞を用いた細胞シートの作製:再現性のある上皮細胞シートの作製するために使用する培養ディッシュの検討を行い、温度応答性細胞培養器材 を使用することとした。歯肉由来上皮細胞の播種密度や培養ディッシュへのコーティング方法の検討などを行った。また、細胞シートの回収が可能となる培養条件および培養時期、回収方法について検証を行った。単層の歯肉由来上皮細胞シートの作製が可能となり、組織標本を作製して細胞シートの組織学評価を行った。 2.口唇由来線維芽細胞を用いた細胞シートの作製:再現性のある上皮細胞シートの作製するために上記1と同様に細胞シートの作製を検討した。単層の口唇由来線維芽細胞シートの作製が可能となり、組織標本を作製して細胞シートの組織学評価を行った。 3.上皮細胞シートおよび線維芽細胞シートの積層:上記1,2で作製した歯肉由来上皮細胞シートと口唇由来線維芽細胞シートの積層を行った。積層方法を確立させるため、温度応答性細胞培養ディッシュの冷却時間や積層時の細胞シート同士の接着に必要な時間を検証した。異種の細胞シートの積層が安定しないこともあり、積層方法の検討が必要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に研究を行うと、当初の計画よりも多くの検討項目および操作方法の手技的訓練が必要とされた。 1.細胞シートの作製・回収:①細胞の種類によって細胞シートを作製する際の条件設定が異なるため、細胞シートの培養条件の検討項目が多く検証に時間を要した。培養ディッシュの選択、細胞数、播種密度、培養ディッシュへのコーティング方法、細胞シートの回収時期に関して検証を行った。細胞と培養ディッシュの接着が強く、細胞シート回収までの培養方法の検証を多く行った。また、培地交換の方法やヒートプレートの使用など工夫が必要とされ、操作の訓練が必要だった。②温度応答性細胞培養ディッシュの性質を利用して細胞シートの回収を行ったが、温度の調節や培地量、冷却時間のコントロールの検証が必要であった。 2.組織標本の作製:細胞シートの組織学的評価を行うために組織標本を作製した。組織標本を作製する際の固定法に関して、固定する際に細胞シートの形状が保たれなかったので、固定の方法に工夫が必要であり検証を行った。 3.細胞シートの積層:細胞シートの積層を行う際に温度応答性細胞培養ディッシュを利用した。細胞シート回収の操作方法に加え、積層時の培養ディッシュの冷却時間や培地量、細胞シート同士の接着に必要な時間の検証などを行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.細胞シートの作製法のコントロール:安定した軟組織細胞シートの回収を可能にするために回収方法について検証を行う。 2.積層軟組織細胞シートの作製:異種細胞シートの積層法の再検討を行い、安定した細胞シートの回収を行う。 3.アバットメントおよび上部構造基材のディスク作製:アバットメントおよび上部構造に使用されている基材を用いてディスクを作製する。機械加工および粗面加工を行い、表面粗さ計測および走査型電子顕微鏡で表面性状の解析を行う。また、軟組織細胞シートの接着に適切な表面粗さの表面加工の検討を行う。 4.細胞シートのディスク表面への接着:上記3で作製したディスク上に細胞シートを被覆して細胞シートとディスク上の接着(mucointegrationの獲得)を行う。ディスクへの接着の評価は、実態顕微鏡および走査型電子顕微鏡による視覚的評価と組織標本を作製し、組織学的評価を行う。 5.in vivo研究:細胞シートのディスクへの接着が可能となれば、アバットメント様構造体を作製し、その周囲に細胞シートの被覆を行い、アバットメントと細胞シートの接着を行う。その後、ラットの脛骨にインプラントを埋入し、インプラントに作製した軟組織接着アバットメントの装着を行う。評価方法として組織標本の作製を行い組織学的評価およびマイクロCT撮像を行い、画像学的評価を行う。アバットメント除去トルク値を測定し、mucointegrationの強度を評価する。対照群として従来法の細胞シート非付着チタンアバットメントを使用する。
|
Causes of Carryover |
研究の進行状況がやや遅れているため、前年度に使用額が予定よりも少なくなった。 次年度は前年度からの当初の計画を遂行する予定である。
|