2020 Fiscal Year Research-status Report
化学的接着機構を有するPEEKの開発と歯科補綴装置作製のための基礎的研究
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20K18625
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
瀧田 美奈 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (30848263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | PEEK / 歯冠修復材料 / 破壊強度 / UV処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は,その優れた機械的強度や生体適合性から新規メタルフリーの歯冠補綴装置用材料として応用が検討されている.しかしながら,PEEKは半結晶性であることから透明感がなく,歯冠色の再現が困難なため,審美性が高く要求される部位においては,歯冠色材料の前装が必要と考えられている. そこで本研究は,コンポジットレジン前装PEEK冠の臨床応用に向け,PEEKと前装用コンポジットレジンの接着を向上する表面改質法の開発を目的とし,以下の項目を明らかにする. 本年度はPEEK表面に前装用材料と接着する官能基を導入する表面改質法を行い,表面改質したPEEK材と前装用材料の機械的強度を評価するため,せん断接着強さ試験を行い,接着条件の検討を行うこととした. PEEK材の板状試験片を作製し,被着面を耐水研磨紙で研磨後,184.7 nmと253.7 nmの波長を発生させる紫外線照射器を用いて表面改質を行った.その際に雰囲気(O2,H2O)を制御することにより表面に結合する水酸化物イオンの制御を試みた.リン酸エステル系モノマーを利用して前装用コンポジットレジン材料を築盛した.次にステンレス製モールドを用いて前装材料を築盛し,重合を行った.その後,万能試験機にて専用治具を用いて,JIS T6517に準拠したせん断試験を行い,接着強さを評価した.さらに,審美性と機能性が要求される上顎中切歯の歯冠補綴を想定したコンポジットレジン前装PEEK冠を作製し,接着性レジンセメントで接着し,万能試験機を用いて,歯軸方向から45°の角度で破壊が生じるまで荷重を負荷し,最大荷重値を記録する.破壊試験後,破壊形態・破断面,歯根の破折を実体顕微鏡にて拡大下で観察を行い,破折様相を分類し,前装冠としての有用性を評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PEEK材を低速切断機にて10 mm ×10 mm ×2 mm厚に切断して被着体を作製した.#1000のSiC耐水研磨紙にて注水下にて研磨し,エタノールと脱イオン水中にて5分間超音波洗浄(Ultrasonic cleaner SUC-35)を2回行った. 184.7 nmと253.7 nmの波長を発生させる紫外線照射器(UVオゾンクリーナー)を用いて表面改質を行った.液滴法にて,表面改質後の接触角の測定を行った. 表面改質した試料に前装用コンポジットレジン材料を築盛し,JIS T6517に準拠したせん断接着強さ試験を行う.接着処理材を混和して,被着面に塗布し,エアーにて乾燥させたのち,歯冠用硬質レジンにて業者指示に従って前装を行った.マスキングテープを用いてフロアブルレジンを塗布し、歯科技工用光照射器にて30秒間光重合を行った.次に直径5mm、厚み2.5mmの割型のステンレスモールドを使用して,オペークレジンを2回に分けて塗布し、歯科技工用光照射器にて60秒間光重合した.デンチンレジンを築盛して,30秒間光重合して積層充填した.エアバリア材を塗布して最終的な光重合を120秒間行った後,15分間100℃にて加熱重合処理を行った.試料をアルミリング(直径20 mm,長さ20 mm)の中にアクリルレジン(Palapress vario)を用いて,包埋した.固定した試料は万能試験機(Autograph AGS-H)にて,ブロックの表面から0.5±0.02 mmの距離にクロスヘッドスピード1.0 mm/minで荷重を負荷して,せん断接着強さを測定した. せん断試験後,界面の状態を実態顕微鏡(APX)にて8倍拡大下で観察を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
歯冠修復材料として使用する十分な接着が必要とされるため,表面改質後の接着処理方法について評価を行う.PEEKとコンポジットレジンの複合体の機械的強度を求めるために,3点曲げ試験による弾性係数および3点曲げ強度の算出を行う. 審美性と機能性が要求される上顎中切歯の歯冠補綴を想定したコンポジットレジン前装PEEK冠を作製する.製作した冠をデュアルキュア型レジンセメントでレジン支台歯に合着し,試料をアルミリング(直径20 mm,長さ20 mm)の中にアクリルレジンを用いて、包埋する.万能試験機を用いて,ステンレス鋼製圧子にてクロスヘッドスピード1.0 mm/minで,歯軸方向から45°の角度で破壊が生じるまで荷重を負荷し,最大荷重値を記録する.破壊試験後,破壊形態・破断面,歯根の破折を実体顕微鏡にて拡大下で観察を行い,破折様相を分類し,前装冠としての有用性を評価する. なお,破壊強度の低下が認められた際には,PEEKフレームの形状を再設計する.
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Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は,接着条件の再検討が必要となったこと,購入予定であった消耗品等が既存のもので遂行可能であったため購入金額が計画よりも少なくなったためである. また,新型コロナウイルスの感染拡大にともない,研究活動が一時停止になったためである. 未使用額と次年度使用額を併せて以下の項目に関して使用する予定である.①研究成果発表のための旅費(国内会議,国際会議)②試料作製に必要な薬品,材料,消耗品の購入③せん断接着試験およびクラウン形態での破壊試験のための必要な材料,消耗品など.
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