2020 Fiscal Year Research-status Report
材料学的及び生物学的因子によるインプラント周囲炎の病態機序の解明と治療法の模索
Project/Area Number |
20K18642
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
菅原 志帆 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (20804363)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インプラント周囲炎 / ナノチタニア / LPS / 細胞内シグナル伝達 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎が、歯周炎と同様に口腔内のプラーク細菌叢を原因として引き起こされているのは周知の事実であるが、チタンより脱落する溶解析出物の影響も考えられる。インプラント体とその補綴装置が置かれている口腔内の環境は、唾液の存在や咬合力の負荷など様々な要因が複雑に絡み合い極めて過酷である。したがって、インプラント-アバットメント界面部では、チタンと生体との接触が密接で物理的及び化学的な反応が生じ、チタンから脱落物が生じる可能性がある。本研究の目的は、材料学的及び生物学的因子、すなわちナノチタニアによるインプラント周囲炎の発症機序を解明し、インプラント周囲炎に罹患する患者のQOLの向上を目指すことにある。 令和2年度は、株化ヒト歯肉上皮細胞に対し、菌体成分(Pg-LPS他)とナノチタニアを作用させ、炎症性サイトカイン(IL-1β等)産生に与える作用を遺伝子解析とプロテイン解析(ELISA)で検証した。歯肉上皮細胞の防御反応(具体的には、活性酸素を放出する好中球の走化性等)はP. gingivalis感染後、早期から惹起していると推測された。さらに上皮細胞はLPS刺激でIL-8を産生し、血管新生を誘導することによってインプラント周囲炎の初期生体反応を引き起こしていると考えられた。 次年度以降、貪食能を有していない上皮細胞におけるナノチタンの細胞内動態を、SEM等によって調査する。また、細胞内シグナル伝達の分子回路の解明と診断/治療への応用検討を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が妊娠に伴う体調不良のため、現在までに進捗状況が研究計画よりやや遅れることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
上皮細胞におけるナノチタニアの、細胞内動態(例、ファゴソーム集積、核内移行等)をSEMやTEM/EDXおよび電子線回折等で調査する。また、歯肉上皮細胞に炎症を惹起する細胞内シグナル伝達の分子回路の解明を分子生物学的に行い、診断用分子マーカーを検索し、さらに治療に繋がるチャネル阻害剤についての検討を行う。
|
Causes of Carryover |
購入予定であった試薬を享受いただいたため。また予定していた海外での発表が中止となったため。本年度実施予定であった画像解析が、研究代表者の妊娠に伴う体調不良により、次年度以降の実施となり、その備品購入等に用いる予定としている。
|
Research Products
(3 results)