2022 Fiscal Year Annual Research Report
材料学的及び生物学的因子によるインプラント周囲炎の病態機序の解明と治療法の模索
Project/Area Number |
20K18642
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
菅原 志帆 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (20804363)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | インプラント周囲炎 / ナノチタニア / LPS / 細胞内シグナル伝達 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎の病態および治療法について様々な検討がなされているが、その詳細はまだ不明である。本研究では、インプラント周囲炎の増悪因子を探索するため、ナノチタニアとPorphyromonas gingivalis由来LPS(PgLPS)添加による歯肉上皮細胞(Ca9-22)の炎症応答性について下記2つの検討を行った。 ①Ca9-22によるナノチタニアの取り込みを走査型電子顕微鏡で観察した。また、炎症応答性について、逆転写定量的PCRおよびELISA法を用いて検討した。その結果、ナノチタニアがCa9-22に取り込まれるのが観察された。IL-6とIL-8は、ナノチタニア添加で有意に増加し、PgLPSによってさらに増加した。骨吸収に関連するIL-11も、ナノチタニア添加で有意に増加した。したがって、ナノチタニアはインプラント周囲炎の悪化に関連し、P. gingivalisの存在はその状態を悪化させることが示唆された。 ②IL-13α2受容体とTGF-β1のmRNA発現について、免疫蛍光染色および RT-qPCR を用いて検討した。その結果、160個の遺伝子発現のうち、IL-13α2受容体をコードするIL-13RA2の発現が最も高かった。また、免疫蛍光染色により、IL-13α2受容体の発現が増加し、IL-13の刺激によりTGF-β1の発現が増強されることが確認された。したがって、ナノチタニアがインプラント周囲の歯肉上皮に接触すると、IL-13α2受容体の発現が増加する可能性があり、その結果として骨吸収に関与する破骨細胞の分化を促進することが知られているTGF-β1の分泌を促進し、歯肉組織に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。 以上より、ナノチタニアはインプラント周囲の骨吸収の進行を促進する可能性があり、歯周病原性細菌の存在により病態を悪化させる可能性があることが示唆された。
|