2022 Fiscal Year Research-status Report
肥満が助長する歯周病感染による認知機能障害における相互作用メカニズムの解明研究
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20K18669
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大植 香菜 広島大学, 病院(歯), 助教 (60760329)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肥満 / 歯周病 / 認知機能障害 / 認知症 / ミクログリア / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症は世界で最も罹患者数の多い神経疾患である.認知機能障害の発症メカニズムには脳内炎症の関与が指摘されているものの,有効な予防法や治療法は未だ確立されていない.このようななか,近年,肥満病態での歯周感染が,糖尿病や非アルコール性脂肪肝炎を増悪するなど,末梢組織での炎症応答を増幅させるという報告がなされている.本研究では,認知症リスクファクターとしての肥満病態と歯周感染の相互作用の神経科学的基盤を示し,末梢-中枢連関のメカニズムとミクログリアの意義を明らかにすることを目的とする. これまでの研究において,肥満(高脂肪食)‐歯周病(P. gingivalis経口塗布)モデルマウスを作成し,新奇物体認知試験で肥満―歯周病マウスが他の群と比較して有意に短期記憶能力の低下を認め,認知機能が低下していることがわかった.続いて,肥満‐歯周病モデルマウスの脳切片を用いて,海馬の免疫組織化学染色を行い,海馬でのミクログリアの細胞数の変化や形態学的な変化を確認した.高脂肪食群のマウス海馬ではミクログリア細胞数は通常食群と比較して有意に増加していた.また,高脂肪食・Pg(-)群と比較して,高脂肪食・Pg(+)群のミクログリア細胞体面積の有意な増大を認めた.さらに,肥満―歯周病モデルマウスの海馬組織サンプルを用いて,リアルタイムPCRにより解析したところ,高脂肪食・Pg(+)群のマウス海馬における炎症性サイトカインの遺伝子発現の有意な増加を認めた.さらに,コロニー刺激因子1受容体阻害剤PLX3397による全身のミクログリアの枯渇は,P. gingivalisを処置した肥満マウスの認知機能障害を改善した.以上のことから,P. gingivalisの経口感染が,脳内炎症に関連した食餌性肥満マウスの認知機能を低下させ,この認知機能障害をミクログリアが媒介することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満歯周病マウス作成期間は当初の予定では8週間程度を予定していたが,認知機能行動解析をmiddle-agedマウス(35週齢程度)で行うことに変更したため,モデルマウス作成にやや時間を要することとなった.その他はほぼ計画通り進めることが出来ている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,これまでの結果をまとめ国際学会誌へ成果報告をおこなう.
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Causes of Carryover |
これまでの研究成果をまとめ、現在国際学術雑誌へ投稿中であり、論文掲載料として費用が今後掛かる見込みであるため。
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