2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌における予後因子の同定および癌増殖局所の機能分子を標的とした治療法の開発
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20K18675
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小池 和茂 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (40815263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 予後因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、口腔扁平上皮癌(OSCC)増殖局所の微小環境における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の実態、発育先進部の簇出、上皮-間葉移行(EMT)の発現、分子生物学的解析を行うことで、臨床病理学的因子との相互関係を解明し治療への応用を目的とする基礎的研究である。 これまでの主な研究の成果として、OSCCにおける免疫組織化学染色による検討で、腫瘍浸潤先端部(IF)においてHLA classⅠが高発現している場合には、CD8陽性T細胞がHLA classⅠ分子より提示された抗原を認識・活性化し、CTLとしての機能を発揮するのに対して、HLA classⅠが低発現している場合には、癌細胞の免疫逃避機構が生じ、予後不良となることが考えられた。またCD8陽性T細胞とHLA classⅠの発現レベルに相関を認めない一部の症例については、CD4陽性T細胞が高発現していることから、活性化CD4陽性T細胞によって主に分泌されるIFN-γによってHLA classⅠの発現増加が生じているものの、抗原認識がなされずCD8陽性T細胞の活性化につながっていない可能性が考えられ、腫瘍浸潤先端部のHLA classⅠの発現レベルは有用な予後予測因子となり得ることが明らかとなった。(Cancer Sci 2020) その他にもOSCCにおいて腫瘍浸潤先端部(IF)と腫瘍中心部(TCe)におけるFoxP3陽性T細胞とCTLA-4の発現について免疫組織化学染色により検討した結果、IFの実質におけるFoxP3陽性T細胞の高発現群においてOSが有意に高く、有用な予後因子であることがあることが示された。また、OSCCにおいてFoxP3陽性T細胞は制御性T細胞(Treg)としての機能を有していない可能性があり、CTLA-4陽性細胞がFoxP3陽性T細胞の機能を抑制していることを明らかにした。(PLoS ONE 2020)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスによる影響で発注した抗体の到着が遅れ、研究計画の遂行に影響した。 一方で、研究成果に関してはCancer Sci、PLoS Oneのオープンアクセス誌に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は口腔扁平上皮癌におけるNK細胞、マクロファージでの発現と予後との関連性について検討していきたいと考えており、それぞれの一次抗体を購入し現在評価を行っている所である。また、HLA classⅡとCD4の発現と予後との関連性についても併せて検討していきたいと考えており、今後一次抗体を購入して評価していく予定である。また、口腔癌における上皮-間葉移行(EMT)の発現、分子生物学的解析については当初の予定通り進めていき、癌増殖局所の微小環境における臨床病理学的因子との相互関係を解明し治療への応用を目指していく。
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Causes of Carryover |
当初は顕微鏡の購入を予定していたが、科研費交付前に講座で購入したため不要になった。新型コロナウィルスによる影響で発注した抗体の到着が遅れ、研究計画の遂行に影響した。今後の使用計画としては引き続き予後因子となり得る可能性のある一次抗体の購入、および免疫染色に必要な消耗品に関しては適宜購入していく予定である。
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Research Products
(7 results)