2020 Fiscal Year Research-status Report
A novel pathophysiological mechanism of dry mouth
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20K18689
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
岸川 咲吏 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50781358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 唾液腺 / ドライマウス / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドライマウスは唾液分泌量の減少による口腔乾燥を主症状とする疾患である。唾液には歯の再石灰化を促す物質や、殺菌・抗菌作用を持つ物質が含まれており、口腔を潤す役割を持つ。ドライマウスになると唾液が減少するため、歯周病やう蝕などの口腔状態の悪化や舌痛、さらには摂食・味覚・発音の障害になりやすい。ドライマウスの原因としてはストレス性の神経障害等が挙げられているが、近年、肥満患者での発症増加が世界中で報告されている。しかし、肥満とドライマウスの分子生物学的関連性の報告はなく、肥満がドライマウスを誘導するメカニズムは不明なままである。申請者は過去の研究報告から、肥満が炎症や酸化ストレスを惹起し、唾液腺の細胞老化を招くことで唾液腺の機能低下が誘発されるのではないかと考えた。そこで本研究は、高脂肪食摂取肥満マウスを用いて、① 加齢変化を起こす唾液腺細胞の特定と唾液腺の器質的・機能的変化、② 唾液腺が細胞老化を起こすメカニズム、③ 肥満の改善や老化細胞の化学的除去による唾液腺の機能回復の有無、の3点について解析を行い、肥満がドライマウスを発症させる分子メカニズムを明らかにする。高脂肪食を12週間摂取させたマウス(以下HFDマウス、週齢20週)では顎下腺において老化マーカーのひとつであるp53が発現しており、肥満による老化促進が示唆された。しかしコントロールに比べて顕著な肉眼的変化は見られなかった。そこで唾液腺マーカーであるアクアポリン5と老化マーカーであるSA-βgal、核マーカーであるDAPIで染色を行い、唾液腺の器質的変化について検討し三重染色を行ったところ、HFDマウスでは唾液腺の管腔側にSA-βgalがコントロールよりも強く染色されていた。ここまでの結果から肥満が唾液腺組織に老化を惹起することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化が起きている唾液腺細胞の同定を行う予定だったが、実験結果からSA-βgalとの非特異的発現が強いことが判明したため、組織染色におけるspider-βgal染色の条件検討を行う必要が生じた。また、HFDマウスの作製にあたり、体重増加がおきても血糖値が十分に上がらないなど、マウス個体間でばらつきがでてしまい実験に使用するマウスが限られたこと、コロナの発生により勤務時間が限られたことなどにより本研究に充てる時間を縮小せざるを得なかった。また、申請者はR3年度から新しい所属機関へ異動ととなったが、異動先でも継続して研究できる環境を整えつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究結果により、HFDマウスの唾液腺、特に管腔側で老化関連分子(p53、SA-βgal)の発現が上昇していることが確認できた。今後は研究計画に従い、老化関連分子の発現変化と、老化している唾液腺細胞の特定を行う予定である。
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