2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌におけるFGFR c-isoformの発現機構の解明と治療応用
Project/Area Number |
20K18691
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
堀田 麻実 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (00754607)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | FGFR1c isoform / EMT / ZEB1/2 / FGF2 / 口腔扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチン(CDDP)は口腔扁平上皮癌(OSCC)の治療に用いられる最も効果的な薬剤の一つであるが、癌細胞のCDDPに対する抵抗性が、抗がん剤治療の障害となっている。我々は以前に、口腔扁平上皮癌において、FGFR IIIc isoformが発現すると、FGFR1 IIIFc isoform-ERK1/2-ETS-ZEBsのEMTシグナルと、FGFR IIIc isoform-ERK1/2-FGF2のポジティブフィードバックシグナルが協調し合い、EMTが持続されることを報告した。本研究においてはOSCCに対するFGFR1阻害剤の抗腫瘍効果を解明したいと考えている。そのためにまず細胞増殖抑制効果を検討した。11種類の口腔扁平上皮癌細胞を用いてFGFRとESRPの発現特性をrRT-PCR法ならびにウェスタンブロット法により解析した。FGFRのノックダウン細胞を作製し、浸潤能、細胞増殖能を検討した。さらにCDDPとFGFR1阻害剤であるSU5402を併用し細胞増殖能を調べた。11種類の口腔がん細胞を用いて検討した結果、2種類(TSU,HOC313)細胞のみ間葉系分子マーカを発現し、他の細胞に比較し高い浸潤能を示した。これらの細胞のみでFGFR c isoformが発現し、FGF2は増殖能や浸潤能を亢進し、FGFR siRNAや阻害剤SU5402はそれらを抑制した。さらに、ZEBの発現が亢進していた。抗癌剤であるCDDPでは細胞数にほとんど影響を示さなかったが、SU5402を使用することによって顕著に細胞数が抑制された。したがって、FGFR1 c isoformは悪性形質に貢献しており、FGFR1c isoformを阻害することで抗腫瘍効果を得ることができると考えられた。今後は、免疫染色をおこない、組織でのFGFR1 IIIFc isoformの発現を確認していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔癌細胞において間葉系細胞に発現しているFGFR IIIc isoformからの細胞内シグナルがEMT誘導に非常に重要であることがわかった点は非常に順調である。ただしFGFR1及び、FGF2の発現を制御する転写因子がまだ明らかになっておらず、この点では少々苦労しながら、現在も継続して研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、FGFR1 c isoformは悪性形質に貢献しており、FGFR1c isoformを阻害することで抗腫瘍効果を得ることができることがわかった。今後は臨床で得られた組織標本を使用し、免疫染色をおこない、FGFR1,2,3,4の発現を確認していく計画である。
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Causes of Carryover |
予定していたような実験結果が得られず、実験方法を再度検討した。そのため、薬品を購入しなかった。次年度は免疫染色に使用する抗体等の薬品を購入する計画である。
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