2021 Fiscal Year Research-status Report
過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネルは神経障害性疼痛にどのように関与するか
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20K18695
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三宅 沙紀 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40869393)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HCNチャネル / 神経障害性疼痛 / 抗炎症作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛は慢性的な痛みとなり、生活の質を低下させます。近年、神経障害性疼痛に対する全く新たな治療薬として、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネル阻害薬が注目されています。一方、神経障害性疼痛は、直接的な神経損傷の時だけでなく、炎症が関わっていることが報告されています。 本研究代表者はHCNチャネル阻害薬に抗炎症作用があることを発見しましたが、これがどのように痛みの制御に関与しているかはまだ解明できていません。そこで、動物実験および培養した細胞で、HCNチャネル阻害薬による抗炎症作用が、どのように痛みを抑えているかを調べました。 昨年度は、動物モデルを用いてHCNチャネル阻害薬ivabradineを投与し、炎症性メディエータへの影響を検証しました。その結果、ivabradineによって炎症性メディエータであるTNFαの産生が抑制されることが示されました。 本年度は、培養したマウスマクロファージ様細胞(RAW264.7)に大腸菌O55:B5由来のリポ多糖類(LPS)を投与して炎症反応を誘導しました。そこにHCNチャネル阻害薬ivabradineを投与し、炎症性メディエータへの影響を調べ、ivabradineによって炎症性メディエータであるTNFαおよびIL-6の産生が抑制されることが示されました。さらに、LPS投与後に細胞を回収し、抽出したRNAから合成したcDNAを試料としてリアルタイムPCRを行い、HCNチャネルサブタイプ1~4の遺伝子(mRNA)発現を確認した結果、LPS非存在下および存在下ともにHCN2、HCN3のチャネル遺伝子の発現が認められました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終濃度10ng/mLのLPSを投与し炎症反応を惹起させたRAW264.7細胞を用いて、HCNチャネル阻害薬ivabradineを1、10および50μMの最終濃度で投与し、炎症性メディエータへの影響を検証した。試薬投与2時間後に細胞上清中のTNFαおよびIL-6の濃度を測定したところ、ivabradineの投与濃度依存的に各炎症性メディエータ濃度の有意な低下が認められ、HCNチャネルを介して炎症を抑制する可能性が示された。また、LPS投与2時間後にRAW264.7細胞を回収し、RNAの抽出とcDNAの合成を行った。cDNAを試料としてHCNチャネルサブタイプの遺伝子(mRNA)発現をリアルタイムPCRにより調べたところ、LPS非存在下および存在下ともにHCN2およびHCN3のチャネル遺伝子の発現を確認でき、HCN1およびHCN4の発現は確認できなかった。さらに本年度は、RAW264.7細胞にHCNチャネルサブタイプに特異的なsiRNAを導入し、HCN2およびHCN3遺伝子をそれぞれノックダウンできる実験条件を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、RAW264.7細胞にHCNチャネルサブタイプ(HCN1~4)のうちHCN2およびHCN3の遺伝子が発現していることを確認したが、今後、ウェスタン・ブロッティングまたは免疫組織染色によって、HCN2およびHCN3の発現を蛋白レベルで検証する計画にしている。また本年度、RAW264.7細胞にHCNチャネルサブタイプに特異的なsiRNAを導入し、HCN2およびHCN3遺伝子をそれぞれノックダウンできる実験条件を確立することができたので、次年度は、この手法を用いてHCN2およびHCN3サブタイプ遺伝子をノックダウンし、ノックダウンすることによる炎症性メディエータ産生への影響およびivabradineの効果への影響を評価する計画にしている。
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Causes of Carryover |
本年度は、RAW264.7細胞に、HCNチャネルサブタイプ(HCN1~4)のうちHCN2およびHCN3の遺伝子が発現していることを確認した。さらに、HCNチャネルサブタイプに特異的なsiRNAを導入し、HCN2およびHCN3遺伝子をそれぞれノックダウンできる実験条件を確立することができた。しかし、サブタイプ遺伝子をノックダウンすることによる実験は進行中であり、それに関わる費用が当初の計画よりも安価となった。次年度も継続して分子生物学的実験が必要となるため、高額な費用が必要となる。
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