2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of mitochondorial dynamics for chemoresistance and creation of novel therapeutic methods
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20K18699
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川原 健太 熊本大学, 病院, 助教 (90732735)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔癌 / シスプラチン耐性 / ミトコンドリア / カルシウム / カルシウムキレーター / ストア依存性カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、種々の癌で汎用されているシスプラチンに治療抵抗性のある口腔癌に対して、シスプラチンの抗腫瘍効果におけるカルシウム・ミトコンドリアの役割を解明することである。前年度に細胞外カルシウムキレーターであるEGTAとシスプラチンを併用することで、治療抵抗性である口腔癌細胞株:HOC-313の細胞増殖抑制と細胞死を増加させたことから、カルシウムによる細胞死への関与の可能性が示されていた。そこで実際に治療抵抗性口腔癌細胞株であるHOC-313と感受性株であるSASの両株にシスプラチンを添加し、細胞内カルシウム染色試薬Fluo4-AMで染色したところ、感受性株では比較的カルシウムが染色されたが、耐性株ではあまり検出されなかった。またカルシウムの所在を確認するためにミトコンドリア内のカルシウム染色試薬Rhod2-AMを使用したところ、同じく感受性株ではミトコンドリア内のカルシウムが染色され、耐性株では検出されなかった。また別の感受性株:HSC3でも細胞質およびミトコンドリア内のカルシウムを染色することができたが、耐性株:TSUでも同様に染色されなかった。そこでミトコンドリアの膜電位を測定するためにJC-1を用いて染色したところ、耐性株HOC-313ではシスプラチンを曝露させることで、ミトコンドリアの膜電位が一過性に上昇しており、過分極を引き起こしている状態であった。つまりこれは耐性株ではシスプラチンを曝露させることで、小胞体からのミトコンドリアへのカルシウムの流入を引き起こしている可能性があり、小胞体内のカルシウムが枯渇することで、細胞膜表面にあるストア依存性カルシウムチャネル(SOCE)が活性化し、SOCEの関与の可能性も示唆された。これらの実験結果からも、ミトコンドリアの膜電位やそれに伴うカルシウムの移動が、何らかの形で耐性に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はカルシウムキレーターとシスプラチンを用いて細胞増殖や細胞死を観察するのみであったが、今回細胞内のカルシウムを実際に染色することが可能であった。また1種類の細胞株のみでの実験であったが、今回シスプラチンの耐性株2種類、感受性株2種類の計4細胞株を用いて実験を行うことができ、また細胞内やミトコンドリア内のカルシウムに差があることが証明できたため、信憑性が高いといえる。さらに今回はミトコンドリアの膜電位の測定も行うことができ、耐性株で膜電位の上昇を捉えることが可能であった。 しかしながら、カルシウムの染色実験では耐性株において、細胞質やミトコンドリア内のカルシウムがあまり検出されなかったが、実際にはミトコンドリアの膜電位が上昇しており、カルシウムがミトコンドリアや細胞質内へ流入していることが示唆されたため、今後はカルシウムが早期の反応なのか、後期の反応なのかを検討する必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も4細胞株を用いて実験を進める。ミトコンドリアの膜電位についてはまだ2細胞株しか行えていないため、残りの2細胞株においても同様の実験を行う。膜電位の測定が終わったのち、実際にストア依存性カルシウムチャネルが動いているか確認するために、タプシガルギンを用いてカルシウム枯渇実験も行う。またシスプラチンを曝露した直後のカルシウムの挙動を捉える必要があり、添加直後からのカルシウムの挙動を測定する。 最後に研究協力者らとともにプラズマ照射液による細胞死やカルシウムの挙動も検討し、PDXモデルを使用した抗腫瘍効果も視野にいれる。
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Causes of Carryover |
予想より研究が順調に進んでおり、実験費用が縮小され、またCOVID-19蔓延のため、学会参加費等で使用しなかったため、差額が生じたと思われる。次年度、引き続き実験を主として進めていく予定である。
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