2020 Fiscal Year Research-status Report
PARPを標的とした口腔癌の放射線抵抗性機構の解明と新規治療戦略の創出
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20K18700
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂田 純基 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (70823326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔癌 / オラパリブ |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮癌 (OSCC) において放射線治療は主要な治療法の一つであるが、その有効性には個人差が大きく、治療効果の乏しい患者の病勢コントロールや患者予後の改善が課題となっている。PARPはDNA一本鎖切断の修復に重要な役割を果たす酵素であり、PARP阻害剤であるオラパリブはBRCA1/2遺伝子に変異を有する卵巣癌や乳癌でその有効性が示されている。しかしながら、OSCCにおけるオラパリブの効果についてはまだ不明な点が多い。本研究の目的は、OSCC患者に対するより有効性の高い治療法の開発を目指して、放射線抵抗性に関連するPARPの分子生物学的な働きの解明とPARP阻害剤併用の放射線治療の有効性の検討を行うことである。2020年度の成果として、まずOSCC細胞株であるSAS細胞とKON細胞を用いてオラパリブの効果を検証したところ、オラパリブ単剤投与で濃度依存的に細胞増殖の抑制が認められた。またOSCCに対する治療で頻用される化学療法剤シスプラチンおよびフルオロウラシルとの併用効果について検討したところ、シスプラチンでは併用による相乗効果を認めたが、フルオロウラシルでは明らかな相乗効果は確認されなかった。放射線とオラパリブの併用効果について検討したところ、放射線5Gy、10Gy照射のいずれにおいてもオラパリブ併用による殺細胞効果の増強が確認された。以上より、放射線やプラチナ製剤のようなDNA損傷効果がある治療法についてはオラパリブとの併用で効果が増強する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想と大きく違わない結果が出ており、概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
シスプラチンや放射線照射後のDNA損傷について、DNA二本鎖切断のマーカーであるγH2AXの発現について経時的に調べDNA損傷修復の変化を評価する。また当科で保有している抗癌剤耐性株、放射線耐性株とその親株を用いて、それぞれシスプラチン投与後、5-FU投与後、放射線照射後のPARP発現を調べ、耐性株とその親株におけるPARP発現とその局在について評価する。またオラパリブ投与によるOSCCの浸潤転移能への影響の検討として、オラパリブ投与後の細胞浸潤能と遊走能への影響の評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入の端数として4288円が生じました。次年度の物品購入で併せて使用する予定です。
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