2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K18704
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
岡本 準也 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (10749592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔がん / 新規口腔がん特異抗原 / がん免疫 / がん免疫療法 / CTL |
Outline of Annual Research Achievements |
がん免疫療法は国内外における複数の治療成績から、固形がんにおいても一定の抗腫瘍効果を示すことが報告されており、有望ながん治療法として注目されている。がん免疫療法の中でもがんペプチドワクチン療法は、抗原ペプチド特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を増殖、活性化させることにより、がんの縮小に加えて患者予後とQOLの改善を目指す治療法である。 当科にて令和3年度受診し、加療を行った口腔癌患者から検体を採取し、新規口腔癌細胞株の樹立を目的に培養を行なった。これまでに行なってきたpair樹立に向けて、細胞株樹立に成功した患者より採血を行いPBMCの冷凍保存を行っている。今後、PBMCからCTLを抽出し、樹立した細胞株と共培養することによって、新規癌抗原の発見を目指す。 今後の展開としては、まずはHLA-A24拘束性抗原ペプチドの同定を行うことで、そのペプチドの遺伝子配列が同定可能となる。遺伝子配列が同定されればさらにその遺伝子配列を参考にしてHLA-A2やHLA-A11といったその他のHLAに結合するがん特異的抗原ペプチドの同定を行うことが可能となり、本研究ではまずそこまで明らかにしたいと考えている。 並行してこれまでに確立した実験手技、さらには第一病理学講座の協力を得て、新たに確立された手技(癌幹細胞の同定のために、SP法やアルデフローアッセイを用いて癌幹細胞を分離し、癌幹細胞上に発現する分子をマイクロアレイ法でスクリーニングする)を試してみる予定である。 さらに令和4年度日本口腔外科学会・北日本地方会、令和4年度日本口腔外科学会総会、令和4年度日本口腔腫瘍学会にて基礎的な研究の内容や、臨床における抗がん剤治療や、がん免疫療法の効果や副作用について発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規口腔がん細胞株の樹立に成功しており、今後実験系を進めるにあたっておおよその準備は整ってきている。細胞株が樹立できても新鮮なPBMCを血液から抽出できなければ実験が進まず、抗原を特定することが困難になる。 現在樹立できた5株はいずれもがん治療に成功し、生存されており採血がいつでも可能な状態であることから新鮮なPBMCを得ることが可能であり、さらにCTL自体も良い免疫機能を持つと考えられる。 化学療法や、放射線療法を行っているため、少ない細胞株では抗原特定まで至らない可能性があるが、今後細胞株をさらに増やしてから実験を進めることで抗原特定の可能性が上がると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も新規癌細胞株の樹立を行うことと、細胞株自体の母数を増やすことによって今後の実験系を成功させる可能性を上げることができると考えている。また免疫療法の経験値が他臓器癌と比較して少ないために、免疫療法への移行を選択しにくい希少癌でもある。本研究における問題点は当施設のように多くの癌患者の組織、血清が手に入らなければ研究進行が困難であり、また腫瘍免疫に精通している当院病理学講座の協力が必要不可欠である点である。他臓器癌においてはすでにいくつもの有力な癌抗原が発見され、臨床応用されているにも関わらず頭頸部癌領域においては、それらの研究が遅れているのはこのような研究環境が全国をみても数少ないことが挙げられる。口腔扁平上皮癌の初代培養では口腔内常在菌によるcontaminationが起こりやすく、組織片は出来る限り深部から採取する必要があるため、十分な組織量が必要である。また、増殖能の高さから高悪性度癌が望ましいが、高悪性度癌の長期予後は不良のため、患者末梢血から十分なPBMCを得ることが出来ず、安定したCTL供給が困難な場合が多い。また、化学療法や放射線療法を行うことによって当該原発癌の細胞死をきたし、患者の末梢血リンパ球の活性が低下することもCTL cloneの作製を困難にする一因と考えられる。その条件が一致している短い期間の中でスムーズに、かつ大量に培養を行う環境が必要不可欠であり、今後さらに環境を整えていく必要がある。
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Causes of Carryover |
研究に必要な物品購入ができていないため。研究の進行が遅れているため。
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