2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんにおけるmiR-3140の抗がん核酸薬治療応用性の検討
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20K18719
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
外内 えり奈 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (50826831)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔がん / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA(miRNA)は、それ自身はタンパク質をコードしていない、短いノンコーディングRNAであり、1つのmiRNAは複数の遺伝子を多面的に抑制する機能を有する。これまでの研究でmiR-3140は、がん細胞増殖を亢進させるがん遺伝子BRD4やEGFRを抑制する機能を有することを報告した。口腔がんにおいては、EGFRをターゲットとするキメラ抗体が臨床で適用されており、一定の延命効果を示している。実際に口腔がん臨床検体においては、7.7% がEGFRの増幅を有していることが言われている。そこで、口腔がん細胞株の遺伝的背景を評価し、EGFRの増幅の有無でmiR-3140の抗腫瘍効果の差の有無を評価することとした。口腔がん細胞株から抽出したRNAでシークエンス解析を行い、EGFR増幅の有無で細胞株を大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとした。miR-3140をそれぞれの細胞株に導入すると、どちらとも著明な腫瘍細胞増殖抑制効果を示した。EGFRの増幅の有無に限らず、miR-3140のがん細胞増殖抑制効果が見られたことから、EGFR経路だけではなく、既知のターゲット遺伝子であるBRD4等、口腔がんにおける他の重要な経路も複合的に抑制することでがん細胞増殖抑制効果を示すことが推察された。 口腔がん細胞株でmiR-3140を導入した際の変化を解析することで、miR-3140を用いた核酸医薬が治療戦略となり得るか検討をしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、感染症拡大の社会情勢もあり、研究の進捗状況としては厳しい状況であった。これまで、in vitroの実験環境の調整を行っており、細胞培養実験、miR-3140導入による細胞増殖抑制の評価、RNAやDNA、タンパク質を抽出し、下流の遺伝子の発現変化を確認するために、最適な条件の検討を行っている。 口腔がん細胞株から抽出したRNAでシークエンス解析を行い、EGFR増幅の有無で細胞株を大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとし、口腔がんで抑制しうる重要な経路の同定を行っていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、より重要な遺伝子を複合的に抑制できるmiRNAを応用することを目的としている。これまでの研究で、miR-3140はBRD4やEGFRを抑制することを機能としていることを示してきた。まずは、既知の口腔がん治療薬のターゲットであるEGFRに着目し、EGFR発現の高い口腔がん細胞株と、EGFR発現の低い細胞株にmiR-3140を導入することで、細胞増殖抑制能やEGFRタンパク発現量に与える挙動の違いを評価している。これにより、EGFR経路への依存度によりmiR-3140の抗腫瘍効果に差を生じるかを検討し、臨床でmiR-3140を使用する際にEGFRがマーカーとして有用かどうかを評価する。一方で、BRD4は、MYC等がん遺伝子の転写を促進させることによりがん細胞増殖に寄与する遺伝子である。最近の報告では、他のがん種と同様に、頭頸部がんにおいてもBRD4が治療標的になり得るかを検討し、in vitro / in vivoでBET阻害薬の効果があるとの報告がなされてきている。miR-3140はBRD4を直接的に抑制することが可能であり、BRD4の経路の遮断が口腔がん細胞株の細胞増殖抑制に寄与していることが推察され、口腔がんの治療戦略として有用である可能性が高い。miR-3140導入口腔がん細胞株をRNA、DNA、タンパクレベルで解析し、BRD4経路やEGFR経路の遺伝子やタンパクの発現への影響を評価する。 また、分子標的治療薬は有効性が高い反面、耐性の獲得が必発であることから、EGFRやBRD4の阻害剤に耐性を獲得した細胞株を樹立し、miR-3140が耐性株でも効果を示すか評価を行う方針である。
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Causes of Carryover |
学会が中止になったり、社会情勢の影響で実験が進まず、次年度以降で使用する予定となったため
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