2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔がん腫瘍微小環境の解明を目指した多重免疫染色による新規バイオマーカー探索
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20K18736
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
川嶋 理恵 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (10814444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多重免疫染色 / 定量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、口腔癌や白板症、扁平苔癬などのOPMDsについて、治療選択や予後予測となりうるバイオマーカーの特定を目的とする。バイオマーカーの特定により病理組織学的な指標を定めることが可能となり、これら患者の治療効果、生存率の向上、さらには個別化治療を目指す。 実際には患者の組織生検、切除検体のパラフィン切片を用いて、腫瘍微小環境を反映した免疫細胞/分子プロファイリングパネルでの多重免疫染色を行う。各マーカーごとに画像をスキャナーに取り込み、全染色が終了後にソフトウェアを用いて画像の重ね合わせを行い、その局在を可視化する。次に解析ソフトを用いて定量を行い、組織画像や定量結果を臨床情報と照らし合わせて解析することで特異的なバイオマーカーの特定を行う。 2020年度は、大腸癌の組織切片を用いて核染色(ヘマトキシリン), CD45, CD3, CD8, CD20, CD68の多重免疫染色を行い、実際に本研究室にて多重免疫染色が可能かどうかの確認を行った。いくつかの試薬は日本での購入が困難であり、オリジナルのプロトコールと変更せざるを得なかったが、代用品を用いても多重免疫染色の再現は可能であることを確認した。次に、免疫染色のスキャンデータから細胞数などの定量解析を行うため、ImageJ, FIJI, Cell Profiler, FCS Expressなどのソフトウェアの構築を行い、一定の精度の保った定量解析が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績での報告の通り、本研究室にて患者のパラフィン切片を用いて、いくつかのマーカーを用いて腫瘍微小環境を反映した多重免疫染色による定量解析が可能なことが示されたことは、本研究に計画的に遂行するにあたり大きな一歩であると考える。 現在は免疫細胞/分子プロファイリングパネルの各マーカーについて、上記で報告した以外の抗体の購入を検討中である。本研究では、最大29マーカーの抗体が必要であり、予算を考慮しながら、本プロトコールにて使用可能な抗体を慎重に選出している。 また本研究に使用する患者サンプルを検討中であるが、貴重な患者サンプルを用いる上、口腔癌患者の研究においては原発巣vs転移巣、生検検体vs切除検体、免疫チェックポイント阻害薬使用患者と予後との関連などさまざまな比較方法があり、効率的に結果を生み出すため、現在慎重に抽出方法を検討している。白板症や扁平苔癬については、日本、ヨーロッパ、アメリカと診断基準が異なるため一定の見解が得られておらず、これらの患者についてはより慎重に抽出する必要があり、現在熟考を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、腫瘍微小環境を反映した免疫細胞/分子プロファイリングパネルでの全ての多重免疫染色が可能であることを確認したい。その際には本研究の正確性や今後の論文化についても考慮し、本プロトコールが正しく病理組織学的な腫瘍微小環境を反映しているかの検討が重要であり、先行実験が大変重要であると考えている。 先行実験にて本プロトコールでの病理組織学的な腫瘍微小環境の反映を確認した後には、適切な患者抽出を行い口腔癌、白板症、扁平苔癬での多重免疫染色、定量解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度に購入予定であった試薬については購入済みであったが、その他の試薬については実験の遂行状況により次年度に使用予定であったため本年度の購入は見送り、次年度使用額が生じた。
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