2021 Fiscal Year Research-status Report
口腔がん腫瘍微小環境の解明を目指した多重免疫染色による新規バイオマーカー探索
Project/Area Number |
20K18736
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
川嶋 理恵 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (10814444)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | OPMDs / 口腔癌 / 腫瘍微小環境 / 多重免疫染色 / 定量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では口腔癌や、白板症、扁平苔癬などのOPMDsについて、臨床検体を用いた多重免疫染色定量解析法を用いて治療選択や予後予測となりうるバイオマーカーを特定し、病理組織学的な指標を定めることを目的とする。 腫瘍の浸潤、転移などの発生過程において重要である腫瘍微小環境では、腫瘍促進、腫瘍抑制の観点から免疫細胞(リンパ球系細胞/骨髄球系細胞など)の局在や機能が重要と考えられている。本研究では主なターゲットを免疫細胞や免疫チェックポイントに絞ってきた。私が前研究室にて主要メンバーの一人として確立した、腫瘍微小環境を反映した免疫細胞プロファイリングパネルを用いた多重免疫染色定量解析法では、最大12種類のマーカーを1枚の臨床検体パラフィン切片で解析が可能であった。令和2年度には、現在所属する研究室でもこれらの解析が可能となるよう、抗体や試薬の至適化を行い環境を整えた。 しかし研究を進めるにつれ、腫瘍微小環境の評価を行うには免疫細胞のみならず腫瘍間質での反応も非常に重要であることが分かった。そこで間質反応として癌関連線維芽細胞(CAFs)や転移を起こす際に癌細胞上で起こる上皮間葉転換(EMT)、線維化反応に注目した。令和3年度には、新たにこれらの間質反応も評価可能な免疫細胞/免疫チェックポイント/EMT/CAFs/線維化反応プロファイリングパネルを構築し、多重免疫染色定量解析法のプロトコールを確立した。これにより、1枚の臨床検体パラフィン切片より30種類のマーカーの検出、解析が可能となった。 新たなプロファイリングパネルの構築には多くの時間を費やしたが、1枚のパラフィン切片から検出可能なマーカーが12種類から30種類に増えたことは、本研究の今後の発展に大いに役立つと信じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前研究室にて確立した既存の多重免疫染色定量解析法では、1枚のパラフィン切片にて解析可能なマーカー数は12種類であったため、リンパ球系免疫細胞パネル、骨髄球系免疫細胞パネル、T細胞機能分類パネルの3パネルの定量解析を行うには、1症例の臨床検体から最低3枚の連続パラフィン切片が必要であった。しかしながら腫瘍微小環境の評価を行うには、免疫細胞のみならず腫瘍間質での反応も非常に重要であることが分かり、間質の反応として癌関連線維芽細胞(CAFs)や転移を起こす際に癌細胞上で起こる上皮間葉転換(EMT)、線維化反応に注目した。 そこで令和3年度には、2020年に私が共同著者として発表した論文(Banik, G, et al. Methods Enzymol 635: 1-20. 2020)にて確立した1枚のパラフィン切片から最大29マーカーを検出できる多重免疫染色定量解析法を応用して、上記のリンパ球系免疫細胞パネル、骨髄球系免疫細胞パネル、T細胞機能分類パネルの各細胞・分子マーカーに、新たにCAFsやEMT、線維化反応を評価するためのマーカーを加え、各細胞/分子の抗体濃度などの実験条件の至適化を行い、全30マーカーからなる独自の免疫細胞・腫瘍間質評価系プロファイリングパネルを構築した。これにより、1枚の臨床検体パラフィン切片より30種類のマーカーの検出、解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は令和3年度に構築した全30種類のマーカーからなる免疫細胞・腫瘍間質評価系プロファイリングパネルを用いて、OPMDs,口腔癌のヒト検体パラフィン切片を用いて多重免疫染色を行う。 白板症や扁平苔癬などのOPMDsについては、上皮異形成の程度(Severe, moderate, mild)や帯状リンパ球の浸潤の程度により分類して解析を行い、予後との関連を明らかにする予定である。しかしながら、OPMDsについては日本、ヨーロッパ、アメリカと診断基準が異なり世界共通の基準がなく、症例は慎重に抽出する必要がある。その抽出方法については現在も慎重に熟考を重ねている。 口腔癌については、頸部リンパ節転移を起こした約60症例を抽出しており、各免疫細胞の浸潤程度、免疫チェックポイントの発現程度、CAFsの浸潤程度、EMTを起こしている癌細胞の割合、線維化反応の有無などを解析項目とし、生検検体、切除検体を用いて、 免疫チェックポイント阻害薬使用患者と予後との関連に焦点を絞る予定である。 これらの検体を用いた多重免疫染色では、各マーカーの染色ごとに画像をスキャナーに取り込み、全染色が終了後に画像の 重ね合わせを行う。定量については全免疫細胞 (CD45 陽性) が集中した Hot spot などを目的 に応じて抽出し、各マーカーの陽性細胞数のカウントを行い、各マーカーの局在を可視化する。陽性細胞のカウント結果は、すでに構築済みである解析ソフト (FCS Express) を用いて定量を行い、組織画像と合わせ最終的な解析を行う。定量・局在結果は、臨床経過や治療効果、予後、生存率などの臨床情報と照らし合わせ、OPMDs, 口腔癌の特異的なバイオマーカーの特定を行う。
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Causes of Carryover |
本年度購入予定であった試薬を、実験の遂行上購入を見送ったことや、参加予定であった学会などがパンデミックの影響でWeb開催になったことで、使用予定であった費用を使用しなかったため次年度使用額が生じた。次年度には試薬や実験用物品の購入やソフトウェアの更新、学会参加のため使用予定である。
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