2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on oral cancer screening using luorescence Visualization and AI
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20K18739
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
森川 貴迪 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70707596)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔がん / 口腔潜在的悪性疾患 / 口腔粘膜疾患 / 蛍光観察装置 / AI / 光学機器 / がん検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔がんは希少がんとされている。しかしながら、口腔がんは急増しており、さらにその予後は不良である。その理由は進行がんが多いためであり、口腔がんの早期発見・早期治療は急務である。口腔がんの早期発見が困難な理由として、多彩な粘膜疾患が発症するため、その鑑別が困難であることが挙げられる。 光学機器を用いた蛍光観察は、簡便で非侵襲的で繰り返し施行でき、リアルタイムで結果のわかる検査法である。従来の視診・触診に加え、非侵襲的なこの蛍光観察法を合わせることで、精度の向上を検証してきた。蛍光観察は、これまでの評価として視覚的であるため、環境や評価者により、大きく精度が異なることが問題であった。そこで、我々は画像解析を行い、半定量化を検討してきた。画像解析と人工知能(AI)の合性はよく、医療分野でも発展している。胃がんにおいては、AIが応用され、近い将来、AIによるスクリーニングが導入される。本研究では、この光学機器の画像解析とAIを用いて、口腔がんのスクリーニングシステムの構築を目的とした。本研究により、口腔がんや口腔潜在的悪性疾患(OPMDs、いわゆる前がん)の早期発見につながり、予後の改善や、口腔・全身の健康増進につながると考えられる。 2020年度は、現状把握のために、当科とともに行ってきた口腔がん検診について検証した。集団検診より個別検診の方が受診者の自由度が高く、男性の受診割合が増加していた。その結果、OPMDs発見率が向上していた。これらの結果を踏まえ、地域歯科医師会で口腔がんに関する講演を行った。蛍光画像のデータ集積・画像解析、および評価法による鑑別能の最適化のためのアルゴリズムを作成した。その結果、感度・特異度が向上を認め、同結果を論文投稿およびアクセプトを得た。さらなる症例集積を行うとともに、工学部研究チームとの合同でのAI作成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画は、① 光学機器による各口腔粘膜疾患の画像解析・データ集積、② 評価法による鑑別能の最適化、が主目的であった。 まず、口腔がん検診について検討した。当科では歯科医師会や医師会、行政と連携し、検診を行ってきた。集団検診の総受診者は19721名で、要精密検査率は4.45%、がん発見率は0.13%、口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)発見率は1.85%であった。個別検診の総受診者は29912名で、要精密検査率は2.33%、がん発見率は0.08%、OPMDs発見率は2.15%であった。検診を比較すると、個別検診では男性の受診が高くなり、より多くのOPMDsの発見につながったと考えられた(Morikawa et al. Countermeasure and opportunistic screening systems for oral cancer. Oral Oncol,112,105047, 2021.)。コロナ禍で、より個別検診の重要性が高まっていると考える。 ① 画像解析・データ集積については、502例で中間解析を行った。口腔がんとOPMDs、口内炎などの他疾患の鑑別において、健常部では差は認めず、病変部について、視覚的評価・画像解析の結果から得られた他覚的評価において、統計学的差異を認めた。現在もデータ集積を継続している。② 評価法による鑑別能の最適化については、ROC解析を用いて閾値を設定し、感度・特異度を算出した。視覚的評価では感度96.8%、特異度48.4%であった。画像解析の結果、他覚的評価では、感度85.1%、特異度は75.8%と向上を認めた。さらに項目の組み合わせにより、感度は86.6%、特異度は84.6%まで向上した(Morikawa et al. Cancers,12,2771,2020.)。 2020年度の計画通りに経過しており、順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、次の2項目を計画している。 ③ AIの導入:これまでの閾値を基に、AIを導入し教師データにより学習を行う。その後の向上のために、機械学習を行い、新規症例の有効性について検討を行う。 ④ AIを用いた口腔がんの鑑別のためのアプリケーションの開発:さらに簡便に利用できるようにアプリケーションの開発を行うことを予定している。 現在、口腔がんのみならず、OPMDsや他疾患など、データを蓄積している。2020年度に得られた閾値を基に、AIのアルゴリズム作成に生かしていく。さらには、工学部研究チームを編成し、AIを導入し、より精度の高いアルゴリズムについて検証中である。
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Causes of Carryover |
2020年度は、データの集積や画像解析に加え、閾値の設定やアルゴリズムの構築など、計画通りに順調に進んだ。中間報告としての、論文作成を行い、アクセプトに至っている。しかし、コロナ禍であり、学会の中止などにより、積極的な学会参加ができなかった。その分の旅費が残存することとなった。 2021年度は、AI研究チームを編成し、AI研究を進めているところである。成果の公表のため、世情を見ながら学会参加や、論文投稿を予定している。
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