2021 Fiscal Year Annual Research Report
口腔バイオフィルム形成に関わる新規ABCトランスポーターの同定と機能解析
Project/Area Number |
20K18757
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
後藤 花奈 岡山大学, 大学病院, 助教 (90846495)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Streptococcus mutans / バイオフィルム / ABCトランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
齲蝕原性細菌 Streptococcus mutans は、菌体表層に発現する病原性の高いタンパクにより口腔バイオフィルムを形成する。S. mutansは、環境に応じて様々なタンパクを菌体表層に発現させることにより、あらゆる環境に対応し生育し続け、バイオフィルムを形成し続けることが可能である。これらのタンパクの1つにABCトランスポーターがあり、限られた栄養源の中で必要なものを取り込み、不必要なものを排出する働きを持つ。さらに、ABCトランスポーターは、口腔細菌が様々な環境の変化に曝露された際に、ストレスに応答することで発現動態を変化させることが知られており、S. mutans のシグナル伝達システムに関わっているといわれているが、詳細については未だ不明である。 本研究の目的は、S. mutans のバイオフィルム形成に関わるABCトランスポーターについて、新たなタンパクを同定しその機能を解明することである。 本研究では、ABC 膜輸送体をコードするSMU_1519遺伝子欠失変異株を作製し、実験に供試した。SMU_1519遺伝子欠失変異株は、TH液体培地中における増殖速度は遅延し、菌の分裂速度を表すダブリングタイムは延長していた。また、バイオフィルム形成量の低下およびバイオフィルム構造に変化が起きたことからSMU_1519は、バイオフィルム形成に関与していることが示された。蛍光プローブによる細胞膜流動性の解析では、膜流動性の低下を認めた。さらに、培地中に硫酸亜鉛七水和物を添加した場合、増殖速度は遅延し、SMU_1519の発現は増加した。これらのことから、SMU_1519は細胞分裂および細胞膜輸送に関連する遺伝子であり、特に亜鉛の輸送に関与していることが明らかとなった。今後は、バイオフィルム形成におけるSMU_1519の役割についてさらに詳細なメカニズムを検討する予定である。
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