2022 Fiscal Year Annual Research Report
機械的受容体シグナルを応用した新規硬組織形成誘導法の開発
Project/Area Number |
20K18760
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
杉本 明日菜 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80823830)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PIEZO1 / 機械的受容体 / メカニカルストレス / 間葉系幹細胞 / 硬組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外圧環境は,骨の形成維持に影響を及ぼすことが知られている。これまでに細胞外圧負荷による間葉系幹細胞の骨芽細胞系細胞への分化にピエゾ型機械受容イオンチャネル1(PIEZO1)が関与することを明らかにしてきた。 本研究では,より詳細なPIEZO1の骨芽細胞系細胞への分化誘導メカニズムを解明し,PIEZO1シグナルを応用した,新規硬組織形成法の開発を目指すものである。 PIEZO1はカルシウム透過性イオンチャネルであり,侵害性機械刺激のセンサーとして働く。PIEZO1はN末およびC末が細胞内に存在する膜貫通型のタンパク質であり,そのC末側にはR-Ras結合ドメインと呼ばれるアミノ酸構造を持つ。Rasタンパク質はその下流でMAPキナーゼ経路をはじめとする様々なシグナル伝達に関与することが知られている。ERKはMAPキナーゼの1つで,骨芽細胞分化に重要なシグナルの1つである。これまでにRasタンパク質を阻害することにより,PIEZO1を活性化した時にみられるERKのリン酸化が抑制される結果を得ている。そこで,本研究ではPIEZO1のC末に存在するR-Ras結合領域の役割について,詳細な分子メカニズムを解析した。 本研究では,Piezo1を過剰発現させたHEK293細胞とPiezo1のR-Ras結合領域を欠失させたHEK293細胞を作成した。PIEZO1の活性化剤を作用させたところ,R-Ras結合領域を欠失させた細胞では,PIEZO1活性化でみられる細胞内Caの上昇がみられなかった。さらに,R-Ras結合領域を欠失させた細胞株では,PIEZO1を活性化した際にみられるERKのリン酸化が抑制される結果を得た。このことからPIEZO1のR-Ras結合領域がPIEZO1を活性化した際の細胞内のCa上昇と骨芽細胞分化に重要なERKのリン酸化に重要であることが示唆された。
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