2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンメチル基転移酵素EZH2は牽引力による歯根膜の骨芽細胞分化を制御するか
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20K18774
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 新 東北大学, 大学病院, 医員 (10805914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メカニカルストレス / エピジェネティクス / 骨芽細胞分化 / 歯根膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正的歯の移動の牽引側における歯根膜の恒常性維持のためには、骨形成を抑制する分子メカニズムが重要であるが、歯根膜における骨芽細胞分化の抑制的分子制御機構の全容は明らかではない。そこで本研究では、牽引力が負荷された歯根膜細胞において、ヒストン修飾酵素と転写因子がOsx遺伝子発現を制御するか否か解析し、さらに矯正歯科的歯の移動において、そのエピジェネティクス制御による歯根膜細胞から骨芽細胞への分化制御による歯根膜の恒常性維持があるか否かを解明する。 歯根膜細胞の骨芽細胞分化におけるOsx遺伝子のエピジェネティクス制御を明らかにするために以下の実験を行った。本年度は主に条件検討を含め、マウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1)を用いて以下の実験を行った。
1.メカニカルストレスを負荷した際のOsx遺伝子発現を制御するヒストン修飾の変化ついて検証:伸展装置に播種したMC3T3-E1に牽引力を負荷し、Cut&Run assayを用いてOsx遺伝子プロモーター領域でのヒストン修飾量を解析したところ、伸展刺激によってヒストン修飾量が変化することが示唆された。 2.メカニカルストレスを負荷した際の転写因子およびヒストン修飾酵素の相互作用に変化があるか検証:伸展装置に播種したMC3T3-E1に牽引力を負荷し、Duo Link in situ PLAを用いて、転写因子およびヒストン修飾酵素の相互作用の変化を解析したところ、伸展刺激によってこれらの因子の相互作用が変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験条件の検討に時間を要した。 1.ヒストン修飾の検出に時間を要した:予備実験としてMC3T3-E1細胞を用いて伸展刺激負荷によるヒストン修飾変化の検出するため、ChIPアッセイを用いて解析を行っていたが、実験が進むにつれ、検出されるシグナルが実験ごとに不均一になりやすいことが判明した。行っている実験系では培養細胞数に制限があり、細胞数の不足が原因である可能性がある。このため、より細胞数が少なくても検出可能な方法を再検討し、少ない細胞数でもヒストン修飾が検出できるCut&Run assayを行った。新しい解析方法であったため条件検討に時間を要したが、上記細胞でのヒストン修飾検出における安定性が向上した。 2.転写因子とヒストン修飾酵素の相互作用の検出に時間を要した:Duo-Link in situ PLAを用いて、伸展装置シリコーンチャンバー上に播種したMC3T3-E1細胞内のタンパク質間相互作用を解析する際、観察時の細胞状態にばらつきが出てしまい、シグナルの見え方が不均一になってしまった。検出シグナルにブレがなくなるように、手技の均一化、使用試薬の濃度、インキュベート時間等の条件検討を決定するのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は以下に記載した歯根膜細胞、実験動物を用いた本実験に移行する予定である。 1.歯根膜細胞に牽引力負荷した際の転写因子、ヒストン修飾酵素の発現量の解析 2.歯根膜細胞に牽引力負荷した際の転写因子、ヒストン修飾酵素の相互作用の解析 3.歯根膜細胞に牽引力負荷した際のOsx遺伝子プロモーター領域での転写因子、ヒストン修飾酵素、ヒストン修飾量の解析 4.マウスを用いた歯の移動モデルの歯根膜でのOsx、ヒストン修飾酵素、転写因子の発現量の解析 上記1,2,3については前年度の条件検討の結果をもとに進める予定である。上記4については、条件検討が必要になるため迅速に実験に移る予定である。
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