2022 Fiscal Year Research-status Report
新規舌機能の診断法への取り組み-EPGシステムへの応用-
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20K18796
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
柏村 晴子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20425268)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 口腔機能発達不全症 |
Outline of Annual Research Achievements |
舌機能を診断する新しい評価法への取り組みをテーマとし研究を行ってきている。具体的な方法としては、構音に誤りのある小児を客観的に診断するために、与えられた単語を正しく発語できるかを調べる必要があると考え、当科外来に来院する患児を対象に選定した16枚の絵カードを用いて構音させ、音声をボイスレコーダーで、口唇・舌の動きをビデオにて記録した。チェアサイドでは「リップルくん」を用いた口唇閉鎖力の測定や切歯部の被蓋状態を確認し、保護者には患児に関するアンケートに答えてもらった。 6~12歳の男女計24名を対象とした解析では、口唇閉鎖不全や舌突出癖の有無と構音時の口唇・舌の動きの誤りの一致率は低く、嚥下時に舌突出を認めなくても、構音させてみないと舌突出は見抜けない可能性が考えられた。結果、ビデオにて判定することは歯科医師がこれまでに行っていた口腔機能発達不全症の診断方法や、保護者からのアンケート調査ではリストアップされない口腔機能発達不全児を診断できるツールになる可能性があると考えられた。また、年齢や口唇閉鎖力の測定をOverjetやOverbiteと総合的に判断することで、より正確に介入が必要な児を特定できる可能性があると考えられた。 歯間化においては構音時の舌の接触状態を確認するため、歯間化群と判定した切歯交換期の小児を対象として、EPGを用い歯間化構音時の口蓋への舌の接触パターンを観察した。EPGとは、専用の解析ソフトによって口蓋への舌の接触部位をオンタイムでモニターに映しだして記録できるシステムである。結果、構音の歯間化が起きている小児において、歯間化構音が観察される小児では、舌の中央や後方部の口蓋への接触パターンが正常に近いものと、異なるものが存在していた。以上より、舌の口蓋への接触パターンの違いが切歯交換期以降に歯間化構音が残存する要因となる可能性あることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
構音に誤りのある小児を客観的に診断するために、与えられた単語を正しく発語できるかについて調査を行っている。データの裏付けをするため、さらに母数を増やすことが必要と判断した。また研究を進めていく過程の中で、反対咬合やオーバーバイトがマイナスを示す開咬症例は、除外すべきと考えらえたため、新たな母数獲得に時間を要した。しかし、現在母数自体は十分な数を得ることができたため、データ解析を行っている段階である。データ解析を行う中で、年齢だけでなく、歯の萌出状態も考慮する必要があると考えた。そこで、Hellmanの歯齢別でも、両唇音時に口唇を閉鎖しないもの、歯間化構音が見られる小児の口腔形態や習癖を明らかにするための検討を行っている段階である。 歯間化においては構音時の舌の接触状態を確認するため、EPGを用いた舌の接触状態をあわせて確認している。これは患者の模型より作製された人工口蓋床内に、接触を感知する62個の電極が埋め込まれている装置である。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、症例数の確保が困難な時期が続いていた。新型コロナウイルス感染症が5類となるため、今後はさらなる症例数確保ができると考えている。現時点での研究では、構音の歯間化が起きている小児において、歯間化構音が観察される小児では、舌の中央や後方部の口蓋への接触パターンが正常に近いものと、異なるものが存在していることが確認できた。舌の後方の動きを観察する方法として、EPGを用いることは有用であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、対象者がさらに増加し解析に十分な被験者が集まったため、詳しい解析を行っている状態である。被験者のグループ分けを、年齢やHellman歯齢とで検討し、また両唇音時に口唇を閉鎖しないもの、歯間化構音が見られる小児の口腔形態や習癖を明らかにするため、咬合状態、口唇閉鎖力、軟組織評価、保護者へのアンケート調査などの様々な因子で分析を行っている。どの因子が両唇音時に口唇を閉鎖しないもの、歯間化構音が見られる小児に関与しているかを詳しく分析することで、口腔機能発達不全症に対し早期に対応する方法を提示できる可能性があると考えている。また現時点で両唇音時に口唇を閉鎖しないもの、歯間化構音が見られる小児が成長にあわせて、それが自然治癒するのか、それとも持続するのか、その分かれ目の違いとなる因子はなにか、についても検討していきたいと考えている。 歯間化においては構音時の舌の接触状態を確認するため、EPGを用いた計測もあわせて行っているが、まずは対象者数を増やすことが第一の目標である。新型コロナウイルス感染症の影響で被験者数の確保も困難であったが、人工口蓋床内に埋め込まれる電極が海外からの購入となるため、作製そのものが困難な時期が続いていた。今後可能であれば、以前から行っていた電極を減らしたEPG口蓋床作製についてもまた復活させたいと考えている。 口腔機能発達不全症は、近年の小児においてよく認められる疾患であるが、その対応法については様々な要因が複雑にからみ合って起こっているため、筋機能訓練にとどまっているのが現状である。今後この研究をするにあたり、さらに具体的な治療法を提示できればと考え、それを目標に今後も研究を続けていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
以下の2点の理由で次年度に金額が必要と判断した。構音に誤りのある小児を客観的に診断するために、与えられた単語を正しく発語できるかについて調査を行っている。データの裏付けをするため、さらに母数を増やすことが必要と判断した。現在母数自体は十分な数を得られたが、データを分析していく上で両唇音時に口唇を閉鎖しないもの、歯間化構音が見られる小児の口腔形態や習癖を明らかにするため、咬合状態、口唇閉鎖力、軟組織評価、保護者へのアンケート調査などの様々な因子が関与していることが分かってきた。これらの因子がどのような影響を与えているか詳しく解析するためには、統計学的分析が必要と考え、今回研究期間延長を申告した。分析については専門業者への委託も考慮しているため、次年度に金額が必要と判断した1つの理由である。 また、歯間化においては構音時の舌の接触状態を確認するため、EPGを用いた計測もあわせて行っている。これは患者の模型より作製された人工口蓋床内に、接触を感知する62個の電極が埋め込まれている装置であるが、新型コロナ感染症の影響もあり、被験者数獲得に時間を要している。そのため、EPG装置作製が今後も必要と考え、研究期間延長と次年度の金額交付を申請したのがもう1つの理由である。
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