2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a highly sensitive sex determination method using the novel primer set
Project/Area Number |
20K18803
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤本 佳那 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (30866489)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性別判定 / DNA / amelogenin / human gene |
Outline of Annual Research Achievements |
法医歯学領域において、日常取り扱うDNA試料は環境要因や微生物の影響をうけ容易に分解されるため、微量なDNAから正確に判定を行うことが求められている。 従来の性別判定の報告は、その多くがアメロゲニン遺伝子のIntron領域の男女差を利用しているが、Intron領域は時に欠失することが報告されており、時に正確な判定が行うことが出来なかった。 本研究は、塩基配列の保存性が高いアメロゲニンExon領域の中で、男女差以外に塩基配列の多型性がなく、かつ、男女差が数塩基以上みられる領域に着目した。 Exon 1領域は56塩基中13塩基に男女差が認められている事から、Exon 1領域を選定し新規プライマーを設計した。従来の方法では、PCR産物の鎖長がやや長く、約70~100 bpであることから、PCR産物の鎖長をAMEL-Xでは48 bp、AMEL-Yでは43 bpに設計することで高度に断片化したDNAを解析できると考えた。 以前までの研究において、男女ともに10 pgのテンプレート量での性別判定は成功している。ヒトDNAにおいて、1細胞中のDNA量は約6 pgであることが知られており、理論的にはこの量のDNAから性別判定を行えるはずである。そこで、女性特有の子宮頸癌細胞であるHeLa細胞を用いて実験を行った。培養した細胞から1細胞を単離し、新規プライマーセットを用いて性別判定を行った。結果はAMEL-X:21/30、AMEL-Y:Not detectedであり、7割の検出感度を認めた。 本研究で用いるプライマーは配列の内部に数塩基以上の男女差を持つことから、従来のAPLPプライマーに比べて遙かに高い特異性を有している。配列の内部に複数の多型を持つプライマーセットを用いたAPLP法は性別判定のみならず、DNA多型を持つ全ての生物種の多型検出に応用可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規プライマーセットを用いた性別判定において、従来の性別判定において検出感度は男性試料で20 pg、女性試料で10 pgであった。しかし、この方法はアメロゲニン遺伝子の男女差をわずか一塩基の違いのみで検出しているため、鋳型DNA量が少なくなると性別判定が不確実になる傾向がみられた。そこで本研究では、塩基配列の保存性が高いアメロゲニンExon領域の中でも、男女差以外の多型性がなく、かつ男女差が数塩基以上みられる領域に着目し、従来発表されているものより誤判定が少なく高感度の性別判定システムを開発し、確立することを目的とした。 本研究において、ヒトアメロゲニン遺伝子のExon 1領域を用いて新規プライマーを設計し、Amelogenin-X(AMEL-X)遺伝子およびAmelogenin-Y遺伝子(AMEL-Y)ともに10 pgの試料での検出に成功し、男性では最も高い感度を達成している。 ヒトDNAにおいて、1細胞中のDNA量は約6 pgであることが知られており、理論的にはこの量のDNAでも性別判定を行える実験系の確立が可能なはずである。そこで、女性特有の子宮頸癌細胞であるHeLa細胞を用いて実験を行った。培養した細胞から1細胞を単離し、調製をしたPCR反応液に滴下・攪拌し、PCR増幅を行い、実験系の確立を目指した。結果はAMEL-X:21/30、AMEL-Y:Not detectedであり、7割の検出感度を認めた。 今後は男性特有の培養細胞から同様に実験を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
反応系の電気泳動法における有効性が実証されたら、競合プライマーを蛍光標識し、リアルタイムPCR法によりさらに簡便かつ迅速な判定が行えるように検討していく。 次いで、本研究において開発した新規プライマーセットでの検出感度と、法医鑑定に一般的に用いられている個人識別判定キットを用いて検出感度の比較を行っていく。 今後、本研究の方法を改良し、より判定の確実性が高く、高感度で、断片化したDNAにも適用可能、かつ迅速な判定が可能な性別判定法を開発できれば、法医歯学及び人類遺伝学に貢献できると考える。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にて参加学会の中止やオンライン開催によって旅費が減少した。 また、海外から試薬やチップなどの消耗品の輸入が遅れたことが、一部原因となっている。 今後の使用計画として、現在培養細胞を用いて実験系を確立しており、実験を迅速かつ円滑に行っていくために、申請者所属研究室に設備備品としてインキュベーターや微量高速冷却遠心機を購入する予定である。また本研究結果と比較対象である、一般的に法医鑑定に用いられている個人識別判定キットの購入が必要である。
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