2020 Fiscal Year Research-status Report
個人識別を支援するAIを用いた歯科材料判別装置の開発
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20K18812
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
村山 良介 日本大学, 歯学部, 助教 (70706811)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 個人識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 大規模災害時に生じる身元確認作業において必要とされる遺体の歯科所見採得の際に, エックス線を必要としない非破壊装置(超音波, 近赤外線)を用いて, 補綴物および修復物の材質を計測し,その結果を人工知能(AI)を用いて材質を特定するまでのプロセスを自動化することを目的としている. 本研究を進めるにあたり,歯科所見において目視による判別が困難であるセラミックス,ジルコニア,レジン等の歯冠色材料を超音波装置および近赤外線装置で計測し,得られたデータを基礎的に検討する必要がある.その理由は,超音波装置による歯冠色材料の音速の報告は皆無であるため,その波形を解析し,定量化することによって得られた材料間の差を検討する必要があるからである. 供試した試料は歯科用セラミックス.歯科用ジルコニア,CAD/CAM冠用レジンブロックを超音波装置を用いてパルスエコー法によって音速を計測した.さらに各材料の波形を解析し,定量化した. 実験の結果,歯科用ジルコニアの音速は7063.5m/s,歯科用セラミックスの音速は5908.7m/s,CAD/CAMブロックの音速は3839.3m/sであった.これらは材料間で明らかな差が認められた.波形もまた,そのピーク波形と反射第1波の遅延時間は材料間で明らかな差が認められた. 一方で,AI用ワークステーションを用い,人工知能による波形解析のプログラムミングを開始した.学習用データセットとして,超音波装置から得られた波形を.pngファイルに変換し,画像化したものを用いた.開発用言語はPython3.6を用い,アルゴリズムはYOLO v2を用いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は現在までに,歯科用ジルコニア,歯科用セラミックス,歯科用CAD/CAMレジンブロックを試料とした計測を終えている.試料は歯冠部唇側平滑面部を想定し,歯冠部寄りの厚みを2.0mm,歯頚部寄りの厚みを1.0mmとして,シリコンカーバイドペーパーで#1200まで順次研磨して調整したものを用いた.計測に使用した超音波装置は,パルス波送受信部のパルサーレシーバー,プローブの縦波用トランスデューサー(10MHz)および波形観測用装置のデジタルオシロスコープなどから構成される.音速は,サンプルステージ上で試料とプローブを接触触媒のグリセロールを介して垂直に接触させ,オシロスコープ上に表示された波形の遅延時間を計測することにより算出した.なお,この結果は第104次日本法医学会学術全国集会(2020)にて発表済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進捗方策としては,すでに計測が終了している歯科用ジルコニア,セラミックス,CAD/CAMレジンブロックに加え,エナメル質試料としてウシエナメル質,ヒトエナメル質の超音波計測を予定している.これらは,歯冠色材料と天然歯の相違を定量化するために用いる.さらに,近赤外線装置(OCT)による歯冠色材料およびエナメル質の計測を予定している.近赤外線装置(OCT)からは,二次元の信号強度分布と深さ方向の断層が得られる.さらに,人工知能の画像認識のプログラムに,それぞれを画像データとして読み込ませ,繰り返し学習を行い,識別の自動化を行う予定である.さらに,数種類のアルゴリズムを応用し,判定精度を上げる予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ窩での研究が進まず,予定していた物品を購入しなかったため残金が生じた.繰越金は令和3年度助成金と合わせて実験資材の購入費として使用する予定である.
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Research Products
(2 results)