2022 Fiscal Year Research-status Report
歯科恐怖症の発症機序解明と病型分類:感覚処理パターンに注目して
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20K18817
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
小川 美香 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50846417)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯科恐怖 / 感覚過敏性 / 破局的思考 / アレキシサイミア / 共分散構造分析 / 項目反応理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2つの研究課題を実行した。一つ目の課題は、前年度から継続で「感覚過敏性、アレキシサイミア、破局的思考が歯科不安と関連するか」である。複数の概念の関連を明らかにするための手法として、共分散構造分析を用いた。共分散構造分析を施行するには、使用した尺度の構造を明らかにする必要がある。感覚過敏性を測定したSensory Profileは因子構造が不明瞭であったため、オリジナルの15項目から項目反応理論を用いて、一次元性が確認できる9項目を選択した。共分散構造分析の結果、感覚過敏性と痛みに対する破局的思考は、アレキシサイミア傾向のうち感情の同定困難の下位尺度と歯科不安の関係を完全媒介していることが示唆された。 二つ目の研究課題は「Fear of Pain Questionnaire-Ⅲの日本語版を作成し、その信頼性妥当性を検討する」である。さまざま程度の痛みに対する恐怖心の程度を測定する国際的な心理尺度を、原作者の許可を得て日本語に翻訳した。再テスト信頼性、内的整合性ともに高く高い信頼性が示された。抑うつ傾向、不安度は無相関から弱い正の相関がみられ、弁別的妥当性が認められた。一方でFPQ-Ⅲと歯科恐怖と破局的思考には中程度の正の相関がみられ、収束的妥当性を示した。これらの従来的なテスト理論に加えて、新しいテスト理論である項目反応理論を適用した。識別力は重度の痛みに関連する2項目を除くと高く、テスト情報曲線によりオリジナルの30項目版と9項目版は潜在特性値が-2SDから+2SDの対象者で精度が高いことが示された。共分散構造分析により、痛みに対する不安と歯科恐怖の関係には男女差が認められなかった。さらに軽度の痛みに対する恐怖と歯科不安の関係を、医療の痛みに対する恐怖が完全媒介していた。 これらの結果を4件の国内学会で発表し、2報を国際雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
統計解析の正確な実施を試みて、追加解析を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
高い歯科不安をもつ対象者をクラスター分析を用いて分類し、心理的要因(痛みに対する恐怖、感覚過敏性、アレキシサイミア傾向)、環境的要因(負の歯科治療経験、家族の歯科不安)、現在の歯科受診行動、希望する治療法の違いを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
追加の統計解析を行ったため、研究計画がやや遅れている。2023年度に行う予定のアンケート調査費用と、論文掲載料が差額として生じている。
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