2020 Fiscal Year Research-status Report
食と口腔細菌叢の相互作用から紐解く歯周病病因論の新展開
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20K18827
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂中 哲人 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (90815557)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / 食 / 機能性代謝物 / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯間部への食片圧入により食品が歯肉縁付近さらには歯肉溝内に長期間留置されると、歯肉の炎症を来し垂直性骨吸収を伴う歯周病発症の端緒をなすことが古くから知られている。これまでそのメカニズムとして、機械的刺激による歯周組織への損傷が主因であると説明されてきた。近年、ヒト微生物叢研究の進展に伴い、微生物由来の代謝物がヒトの健康や疾患傾向に大きく影響することがわかってきた。特に、腸内細菌と食の相互作用により産生される代謝物が注目され、世界中で宿主に有益あるいは有害に働く微生物とその代謝物の探索が進められている。本研究ではこうした背景のもと、歯周病菌による食の代謝に着目し、代謝物を網羅的に測定する技術であるメタボロミクスを活用し、口腔細菌による食の代謝が歯周病発症に寄与するという仮説を検証する。 まず歯間部に高頻度で留置されやすい食品として、野菜や肉類などの繊維質を多く含んだ食品が挙げられる。その中でも特に食片留置を経験されやすいものとして、ほうれん草と牛肉をモデル食品に選定し実験を進めている。成分既知の最小培地中にモデル食品を入れ、オートクレーブ滅菌後、代表的口腔細菌を一定濃度で懸濁し一定時間経過後、培養上清を回収するとともに増殖率を評価した。回収した培養上清は、ガスクロマトグラフ質量分析計および超高速分離液体クロマトグラフを用いた代謝物解析に供し、各食品に対する各細菌の代謝プロファイルを解析している。さらに、各培養上清を代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalisに作用させ、その増殖能およびバイオフィルム形成能を評価することで、病原性に及ぼす影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎研究に関しては、微生物と食品の共培養システム、そして代謝物測定系の最適化が終了し、これにより再現性のある菌種特異的な代謝物プロファイルの取得に成功している。今後はこうした代謝物プロファイルがP. gingivalisの病原性に及ぼす影響の解析に注力することで、口腔細菌による食の代謝が歯周病発症に寄与するという仮説を検証する。一方、ヒト臨床検体を用いた上記モデルの検証については、コロナ禍の影響もあり進展がやや捗々しくない。今後は感染対策に万全を期しながら可能な範囲で被験者を募り、当初計画を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り研究を推進する。基礎研究については、現在までに確立された微生物と食品の共培養システムと代謝物測定系を利用して、口腔細菌による食品の代謝と歯周病発症との関連性を見出し、その病原性に影響を及ぼす機能性代謝物の同定を目指す。また臨床研究については、ヒト歯垢と食品を共培養して得られる微生物叢および代謝物プロファイルの変動を解析し、上記モデルの妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、研究計画、特にヒト臨床検体を扱う研究に遅延が生じた結果、次年度使用額が生じた。今後は感染対策に配慮しながら被験者を募り当初計画を進めるとともに、コロナ禍の影響による前年度の研究の遅延を挽回する予定である。
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Research Products
(3 results)