2020 Fiscal Year Research-status Report
包括的経過からみる精神科訪問診療の意義・役割・限界 ―初診から転帰までの解析
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20K18883
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
岩谷 潤 和歌山大学, 保健センター, 准教授 (60458057)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精神科訪問診療 / 地域精神医療 / コミュニティ・ケア / 精神疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の精神医療において広がりつつある訪問診療の有効性、役割、限界を明らかにすることを目的とする。訪問診療は医療が必要でありながら単独では通院できない人に対して行う。そのため、必要な治療が中断した者、発症ののち長期に未治療が続く者、高齢で通院が困難な者、若年から中高年に至る引きこもりの者まで、対象は幅広い。本研究では、県内で定期的に訪問診療を行う精神科3診療所における、医療機関や訪問診療を受ける方の特徴、訪問診療の継続や中断などの頻度、訪問診療が継続した時の状態の変化を検討する。 令和2年度は以下を行った。1)協力医療機関である3診療所との研究プロトコル及び研究実施手続書(情報管理に関する手続を含む)の共有、2)統括責任者及び研究協力機関の長による研究倫理eラーニングコースの受講、3)調査票の作成:「医療機関の特徴」、研究対象者ごとの「訪問診療の経過と転帰」、医療従事者ごとの「訪問診療に対する認識」、4)和歌山大学倫理審査委員会からの承認、5) 1診療所におけるパイロット・スタディの開始、である。5)の中間集計では、対象者の年齢が10代-90代と幅広く、初診時の主診断は認知症、統合失調症、不安障害、気分障害、発達障害等を主とした不安障害の合併、精神作用物質使用による障害など多岐に渡る。機能の全般的評定(GAF)に示される精神的健康度の低い方が多く含まれる一方で、訪問診療を開始した時点で向精神薬の処方を受けず、通所サービスや訪問サービスを利用していない方が多いなど、必要な支援を受けずに孤立していた方が多いことが示唆されている。今後、訪問診療が継続または中断される頻度や、継続による状態の変化などについて検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、令和2年度に県内の精神科3診療所から研究対象者のエントリーを予定していたが、この計画を変更し、1診療所におけるパイロット・スタディを開始した。このパイロット・スタディの結果に基づいて、測定項目を再度選定した上で、県内の3診療所からデータ収集を行う予定である。この変更により、パイロット・スタディの結果に基づいた測定項目の慎重な選定と、協力医療機関の負担の軽減を図る。研究計画自体は、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1診療所についてのパイロット・スタディの統計解析を終了次第、その結果に基づいて、重要かつ実施可能な測定項目を抽出し、県内3診療所に行う調査票を作成する。この県内調査の結果を用いて、全国調査の準備とする予定である。
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