2021 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者の徘徊対策のシステマティックレビューと費用対効果分析
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20K18896
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
星野 絵里 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (50598521)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 徘徊 / システマティックレビュー / 費用対効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は国内外での認知症高齢者の 徘徊対策の取り組みを体系的なレビューとしてまとめ、さらに、有効性と安全性が認められた介入に関しての、費用対効果分析を実施する。一連の取り組みによって認知症高齢者の徘徊対策の費用対効果評価を様々な患者条件ごとに検討することで、公的医療費支払者の視点から望ましい対策方針について情報提供が可能となる。また、各種感度分析に基づき、追加的な臨床研究の必要性、デザインについて提言を行うことで、我が国における認知症高齢者の徘徊に関する臨床研究の効率的な推進に寄与することができる。 本研究の目的は、国内外での認知症高齢者の徘徊対策の取り組みを体系的なレビューとしてまとめ、さらに、有効性と安全性が認められた介入に関しての、費用 対効果分析を実施することである。具体的な手順は、①システマティックレビュー(SR: Systematic review)の実施:国内外の医療技術評価・臨床研究につい てSRをもとに、各対策方法の追加的有効性・安全性に関する評価を行う。②費用対効果分析の文献レビューの実施:国内外の費用対効果に関する先行研究を調べ る。③費用効果モデル構造・パラメータ設定:②の結果や専門家意見をもとに認知症高齢者の徘徊予後を表すモデルを構築し、費用対効果分析に必要となるパラ メータや仮定等の整理を行う。④Local adaptationのための観察研究の実施:SRから得られる結果については、国内では未実施の介入法が提示される可能性もあ る。また、海外のコストデータを使うのも実際の現場で発生する費用と乖離する可能性が高い。そのため、本研究の協力医療機関で収集されるレセプトデータを 収集・データベース化し、介入費用や有害事象の治療費などの直接医療費の推計を行う。 ⑤費用対効果評価の実施:①~④の成果を統合することにより認知症 高齢者の徘徊対策の費用対効果評価を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存の文献レビューとして、PubMed、EMBASE、Cochraneの系統的文献検索を行い、2021年2月末までの論文を検索し、3478件が特定された。このうち、本研究でのレビュー対象は、治療費用または費用対効果の結果が示されている経済評価を対象とした。経済評価エビデンスの報告の質の評価指標としては、Consolidated Health Economic Evaluation Reporting Standards(CHEERS)チェックリストを用いて、質が高・中・低の3段階で評価した。プロトコルは、International Prospective Register of Systematic Reviews(CRD42021254326)に登録した。スクリーニングの結果 9件の完全経済評価と1件の部分的な経済評価が特定された。9件の研究の費用対効果比は、患者1人当たり年間-174,600.27INT$から11,487.49INT$の範囲であった。2件の研究ではICERがマイナスであった。最も多く用いられたアウトカムは Cohen-Mansfield Agitation Inventory (CMAI)スコアであった。経済評価の質は9件すべてが、中程度であった。結論としては、すべての研究は、異なるアウトカム指標を用いているため、直接比較の実施が不可能である。エビデンスの報告の質が中程度であった。9件すべての経済評価が、意思決定分析のモデルを採用していなかったため、不確実性に対しての影響について評価できなかった。詳細については、雑誌への投稿の準備を進めている。
費用推計については、ナショナルデータベースを使用して探索的な費用推計を行い、本研究に応用可能な治療に関する費用の推計方法について検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在まとめている論文の出版作業を進めると同時に、本邦において応用可能な介入研究についてまとめ、その後、レセプトデータを収集・データベース化し、介入費用や有害事象の治療費などの直接医療費の推計を行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、旅費の支出が大幅に減った。本年度も引き続き感染状況を精査しながら、オンラインと対面を両立しながら研究を遂行する。
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Research Products
(1 results)