2022 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子の「挿入/欠失」はB型インフルエンザウイルス特有の進化機構か?
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20K18907
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
小田切 崇 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80770221)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ウイルス / 進化 / アミノ酸欠失 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、B型インフルエンザウイルスのVictoria系統株においてHA遺伝子のアミノ酸を一部欠失することで抗原性を大きく変化させた変異ウイルスが出現した。従来のアミノ酸欠失のない株はこの変異株の出現から数年でほぼ淘汰され、現在のB型インフルエンザウイルスVictoria系統株の流行は、ほとんどがアミノ酸欠失を持つ変異株によるものとなった。 本研究では遺伝子の欠失(あるいは挿入)による抗原性の変化がB型インフルエンザウイルス特有の進化様式ではないかと考え、培養実験系を用いたB型インフルエンザウイルスの進化機構解明と今後の進化予測を目指している。 本年度はB型インフルエンザウイルスのHAにおいて報告のある4つのエピトープのうち、近年のB型インフルエンザウイルスVictoria系統株で実際にアミノ酸欠失を生じたエピトープである160-loopを含む領域のペプチドを合成し、マウスに皮下投与した。ペプチド投与後マウスの脾臓からリンパ球を分離し、ミエローマ細胞と融合させることで、B型インフルエンザウイルスのHAに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞の作製と単クローン化を試みた。 B型インフルエンザウイルスのHAを固相化したELISAの検出系を構築し、このELISAを用いたスクリーニングによって、B型インフルエンザウイルスHAと特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を複数得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B型インフルエンザウイルスHAの特定領域に特異的に結合する抗体の作製では、B型インフルエンザウイルスHAを固相化したELISA系を用いてハイブリドーマ細胞の培養上清サンプルをクリーニングした結果、反応を示す培養上清サンプルが複数確認できた。これは、B型インフルエンザウイルスHAに特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が得られたことを示唆するものである。これらのハイブリドーマ細胞から産生された抗体の性状確認は現在進行中であるが、それらの抗体は変異株作出に使用できる可能性を持つことからおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
B型インフルエンザウイルスのHAに特異的に結合する単クローン抗体を精製し、中和能の有無を中和試験にて確認する。また、抗体の配列決定を行いベクターに挿入することで、より高力価の単クローン抗体を得ることを試みる。 得られた単クローン抗体とB型インフルエンザウイルスとの共培養を繰り返すことで、抗体による感染阻害を逃れるような変異株(エスケープミュータント)の作出を試みる。逐次培養上清中のウイルスのHA遺伝子配列を確認することで、アミノ酸欠失またはアミノ酸変異発生の有無を確認し、変異株の性状を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の助成金を計画的に使用し、B型インフルエンザウイルスHAに特異的に結合する抗体作製は順調に進めることができた。 若干の残額が生じたが、次年度の助成金と併せて抗体作製をさらに進め、B型インフルエンザウイルス変異株の作出を試みる予定である。
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