2020 Fiscal Year Research-status Report
in vitro血管モデルを用いた無機ヒ素暴露による心血管疾患の発生機序の解明
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20K18910
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
曹 洋 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (70793751)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無機ヒ素 / 化学形態 / 価数 / 心血管疾患 / 内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
WHOは慢性ヒ素中毒発生地域に居住する人々において、飲料水からの無機ヒ素暴露からの生活習慣病について警鐘を鳴らしている。一方、非無機ヒ素汚染地域に生活する一般的な人々においても、食事からの無機ヒ素暴露による生活習慣病にも強い関心が持たれている。無機ヒ素暴露による心血管疾患の発症機序には不明な点が多く存在する。本来、人は無機ヒ素を摂取すると、肝臓にてメチル化されモノ・ジメチル化ヒ素に代謝され、その代謝物および未変換の無機ヒ素が血管内を循環していると推測される。しかし、従来の研究では、無機ヒ素およびその代謝物の化学形態と価数を考慮した研究ではなかった。 本研究の目的は、人iPS細胞から分化誘導させた血管モデルを用いて、無機ヒ素暴露による心血管疾患の発生原因となるヒ素(化学形態と価数)は何かを解明、そして、炎症性サイトカインの発現解析を通じて心血管疾患の発生メカニズムを総合的に解明することであり、その最初の段階として、ラット正常内皮細胞を用い検証を行った。 これまでの研究成果では、ラット正常内皮細胞にてヒ素化合物(iAsIII, iAsV, MMAIII, MMAV)を暴露し、細胞について生存率、酸化ストレス、細胞死などを解析し、ヒ素化合物の化学形態と価数を考慮した毒作用の違いを検証した結果、3価の無機ヒ素やメチル化ヒ素は5価ヒ素に比較して強く作用すること確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット正常内皮細胞にてヒ素化合物(iAsIII, iAsV, MMAIII, MMAV)1-100 microMを24-48h暴露し、細胞について生存率、酸化ストレス、細胞死(Caspase-3蛋白の発現レベルなど)を解析し、ヒ素化合物の化学形態別の毒作用の違いを検証した。 上記の検討より、本年度の研究目的におおむね達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、引き続き、ラット血管内皮細胞を含めたラット正常細胞及びヒト不死化細胞にヒ素化合物(iAsIII, iAsV, MMAIII, MMAV, DMAIII, DMAV)1-100 microMによる細胞について生存率、細胞死を解析し、さらに、血管内皮細胞機能への影響は細胞遊走能や血管形成能などの評価を行う。これらの試験から、血管機能維持に重要な役割をなす血管内皮細胞、平滑筋細胞およびマクロファージに対して、ヒ素化合物の化学形態別の毒作用の違いを検証する。また、ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞(MiraCell Endothelial Cells)、ヒトiPS細胞由来平滑筋細胞およびマクロファージに細胞毒性試験を行う。分化誘導されたiPS細胞を用いた毒性作用が不死化細胞と同様な結果であるかを確認し、iPS細胞での解析の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
理由)2020年度に予定していたラット正常細胞(平滑筋細胞、マクロファージ)およびヒト不死化細胞を用いた基礎的検討の実験が延期したため、その結果として研究費の使用が次年度に繰り越しになった。
使用計画)2020年度未使用額と2021度助成金を併せて、ラット正常細胞、ヒト不死化細胞、iPS由来細胞を用いたヒ素化合物の細胞毒性の検討を行い、その際に使用する細胞培養用試薬・器具、分子生物学的試薬、成果発表のための旅費、それらに付随する学会参加費に充当する。
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