2020 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性インフルエンザ株の出現機構に寄与するMutatorウイルスの機能意義
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20K18915
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
森 幸太郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, メディカルゲノムセンター・ゲノム医療研究推進室長 (10773822)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Quasispecies / Fidelity / influenza virus / polymerase |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスでは、ゲノム複製時にウイルスポリメラーゼによって高頻度に変異が導入されるため、感染細胞中の子孫ウイルスは遺伝的に不均一な「Quasispecies」と呼ばれる集団を形成している。過去の報告から、季節性インフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼは複製忠実度(Fidelity)が低く、およそ140000に1塩基の頻度で塩基置換が生じるとされている。ウイルスポリメラーゼサブユニットの1つであるPB1上の82番目のアミノ酸がチロシン(Y)からシステイン(C)に変異した株(PB1-Y82C)は、過去の流行株のウイルスポリメラーゼと比較して約2倍変異を導入しやすい「高頻度変異導入株(以下、Mutator mutant)」である。本年度は、インフルエンザウイルスは様々な淘汰圧にさらされた場合、Mutator mutantの発現を調節してQuasispeciesの多様化を引き起こすことでこれを回避するという仮説の検証を試みた。野生型インフルエンザウイルスを培養細胞に感染させ、増殖制限をかけて連続継代を行い、ウイルス継代を行うごとに子孫ウイルス粒子をサンプリングし、耐性株が出現した時点でサンプリングを終了するという計画の下、実験を行った。各継代数のウイルスゲノムにおいて、PB1-Y82領域の塩基配列をNGSにより解析した。ノイラミニダーゼ阻害剤であるオセルタミビルにて増殖制限をかけた場合、ウイルス集団中のPB1-Y82Cゲノムの割合が増加する傾向が観察された。これより、増殖制限存在下ではMutator mutantの割合が上昇し、耐性変異の獲得機会を増やす機構の存在が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野生型インフルエンザウイルス感染細胞中にMutator mutantが存在すること、およびMutator mutantの存在比率がオセルタミビルによる増殖制限を加えることで上昇するという、本研究課題の核となる現象が観察でき、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス個体を用いた感染実験系を立ち上げ、培養細胞で観察された現象がin vivoでも生じることを明らかにするとともに、オセルタミビルによりMutator mutantの存在比率が上昇するメカニズムを調べる。
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Causes of Carryover |
マウス個体を用いた実験を行うことができなかったので、次年度に使用する。
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