2021 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性インフルエンザ株の出現機構に寄与するMutatorウイルスの機能意義
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20K18915
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
森 幸太郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, メディカルゲノムセンター・ゲノム医療研究推進室長 (10773822)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Quasispecies / Fidelity |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスでは、ゲノム複製時にウイルスポリメラーゼによって高頻度に変異が導入されるため、感染細胞中の子孫ウイルスは遺伝的に不均一な「Quasispecies」と呼ばれる集団を形成している。過去の報告から、季節性インフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼは複製忠実度(Fidelity)が低く、およそ140000に1塩基の頻度で塩基置換が生じるとされている。ウイルスポリメラーゼサブユニットの1つであるPB1上の82番目のアミノ酸がチロシン(Y)からシステイン(C)に変異した株(PB1-Y82C)は、過去の流行株のウイルスポリメラーゼと比較して約2倍変異を導入しやすい「高頻度変異導入株(以下、Mutator mutant)」である。これまでに、培養細胞を用いた実験系で、インフルエンザウイルスにノイラミニダーゼ阻害剤であるオセルタミビルにて増殖制限をかけた場合、ウイルス集団中のPB1-Y82Cゲノムの割合が増加する傾向が観察されていた。本年度は、培養細胞にインフルエンザウイルスのレプリコンを再構成し、インフルエンザウイルスポリメラーゼ阻害剤であるバロキサビルを用いて増殖制限をかけ、複製されたウイルスゲノムのPB1-Y82領域の塩基配列をNGSにより解析した。しかしながら、薬剤濃度およびタイムコースの組み合わせに関わらず、薬剤非添加群と比較してウイルス集団中のPB1-Y82Cゲノムの割合に変化は観察されなかった。これより、増殖制限をかけることでPB1-Y82Cゲノムの割合が上昇する現象は、ノイラミニダーゼインヒビターに特異的な現象であることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
臨床業務のエフォートを上げざるを得ない状況となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス個体を用いた感染実験系を立ち上げ、培養細胞で観察された現象がin vivoでも生じることを明らかにするとともに、オセルタミビルによりPB1-Y82Cの存在比率が上昇するメカニズムを調べる。
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Causes of Carryover |
臨床業務にエフォートを割く必要が生じたこと、および学会発表を含む全ての出張を中止したため。次年度は消耗品、解析用PC、旅費、英文校正、論文投稿料に使用する予定。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Case Report of Left Ventricular Noncompaction Cardiomyopathy Characterized by Undulating Phenotypes in Adult Patients2021
Author(s)
Wataru Miyake, Mayu Minemoto, Hiromasa Hayama, Masaya Yamamoto, Toru Okazaki, Kozue Takano, Kotaro Mori, Atsuko Okazaki, Reiko Arakawa, Hisao Hara, Fumihiko Takeuchi, Yukio Hiroi, Norihiro Kato
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Journal Title
International Heart Journal
Volume: 62
Pages: 1420-1429
DOI
Peer Reviewed / Open Access