2020 Fiscal Year Research-status Report
一回感染性ウイルス様粒子を用いたフラビウイルス脳炎における診断法の確立と実用化
Project/Area Number |
20K18917
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
山口 宏樹 北海道立衛生研究所, その他部局等, 主査 (50777836)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダニ媒介脳炎 / フラビウイルス / 一回感染性ウイルス様粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダニ媒介脳炎(Tick-borne encephalitis: TBE)は、フラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるTBEウイルス(TBEV)によって起こる人獣共通感染症である。TBEVは自然界においてIxodes属のマダニと野生動物との間で感染環を形成し、ヒトへの主な感染経路はウイルス保有マダニの刺咬である。海外ではワクチンの接種が推奨されているが、日本国内ではワクチンが未認可なため、最善の予防策はマダニの刺咬を防ぐことである。国内ではこれまで5名のTBE症例が報告され(うち2名死亡)、疫学調査によりこれら5名の患者は北海道内での感染が疑われるとともに、北海道には約30%の致命率を持つ極東型TBEVが分布していることが明らかになった。 本症は、発病初期においてすでに抗体価が上昇していることから、TBEV遺伝子の検出やウイルス分離による診断は困難である。よって、本症の診断は、IgM抗体の検出や中和試験による抗体検出などの血清学的手法に限られる。当所では、「Strep-tagを付加した北海道由来のTBEVのウイルス様粒子」を抗原とするIgG-ELISA法とIgM捕捉ELISA法を用いて、ペア血清によるIgG抗体の陽転や特異的IgM抗体の検出によるTBEの行政検査を地方自治体で唯一実施し、患者の早期診断に貢献してきた。ELISA法は安全かつ簡便に検査を実施できるが、交差反応による擬陽性の存在が問題となる。一方、特異性が高い中和試験は感染性ウイルスを使用するため、検査従事者への感染の危険性や取扱いに対する厳しい基準があり汎用性に欠ける。そこで、本研究では、一回感染性ウイルス様粒子(SRIPs)による「高い特異性・安全性・簡便性」を併せ持つ診断法の確立と、ヒト臨床検体を用いた評価及び実用化を目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は北海道立衛生研究所 感染症部 ウイルスグループに所属しており、当グループは2020年2月上旬から新型コロナウイルス感染症検査業務を実施している。当グループは北海道内の新型コロナウイルス感染症検査業務の中枢を担っており、当該年度に本研究を実施することは適わなかった。さらに、本実施状況報告書を記載する2021年5月末現在にあたってもその状況は変わっていない。そのため、進捗状況として「(3)やや、遅れている。」と判断した。なお、研究費の一部は新型コロナウイルス感染症の研究に使用した。具体的には、新型コロナウイルス感染症のイムノクロマトキットを購入し、抗体保有調査を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に実施できなかった研究計画に関して実施予定である。プラスミド構築に関しては、国立感染症研究所ウイルス第二部や北海道大学獣医学研究院と共同で作成し、研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究を実施できなかった期間や、旅費の使用が無かったことを受け、次年度使用額が生じた。これらは主に物品費として使用する予定である。
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