2022 Fiscal Year Research-status Report
化学物質過敏症患者を対象とした室内環境中の化学物質評価に関する新たな戦略
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20K18919
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
戸次 加奈江 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (00722084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イソシアネート / 拡散サンプラー / 室内環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に,イソシアン酸やメチルイソシアネートなどのイソシアネート化合物は,感作性が高く,僅かな吸入でさえもアレルギー喘息や神経系への影響を及ぼすことが報告されている。環境中での主な発生源としては,自動車などの燃料燃焼や廃棄物燃焼などを初め,室内でも調理や喫煙などから発生するため,室内汚染因子の一つとなっていることが報告され、日常生活において長時間曝露される可能性が高く,健康影響との関連が懸念されている。そこで本研究では,実環境下での汚染や健康影響との関連性を調べる上で,多検体の疫学的な調査研究にも有効な電力を必要としない拡散サンプラーによる測定法を検討し,実環境下での測定法としての応用を試みた。結果として、対象とするイソシアネート4種(ICA,MIC,EIC,PIC)が検出され、7日間まで直線性のある時間依存的な濃度の増加が確認されたため、1週間の連続した捕集が可能であることを確認した。次に、空気中のイソシアネート濃度を算出するため、SCX-DBAサンプラーによるアクティブ法と拡散サンプラー(GDDサンプラー)との比較によりサンプリングレート(SR)を求めたところ、各成分ごとに次の結果が得られた(ICA: 296 ml/min、MIC: 78 ml/min、EIC: 548 ml/min、PIC: 311 ml/min)。本手法を用い、一般住宅における実環境下での測定を行ったところ、検出されたイソシアネートは、成分によって、室内または屋外からの異なる発生源が影響している可能性が考えられ、屋外濃度については、季節的な変動等についても調べる必要性が示唆された。また、一部の住宅では、喫煙により発生したイソシアネートが、汚染の要因となっている可能性があり、健康への配慮から、環境改善の必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、サンプラーの開発から環境測定に至るまで、順調に調査研究を進めることができている。コロナ禍の影響により、試薬の入手等に遅れが生じたことや、環境測定の実施計画に遅れが生じていたものの、現在は、概ね計画通り進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、環境中イソシアネートの簡易測定法が確立されたことから、環境中の汚染実態を調べるため、現在、環境測定を実施しているが、今後、さらに継続していくことで、イソシアネートの環境中での動態をより詳細に調べ、環境汚染物質としての重要性を明らかにしていくと共に、健康影響との関連性を調べる上での基礎データを得る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染により、試薬や物品の入手に時間を要したことや、環境調査の予定に変更があったため、全体計画が遅れが生じ、次年度の使用額が生じた。今年度は、既に環境調査を開始しており、実験に必要な物品等の準備もできているため、予定通り令和5年度内に調査及び成分分析を終えられる計画である。
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