2023 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質過敏症患者を対象とした室内環境中の化学物質評価に関する新たな戦略
Project/Area Number |
20K18919
|
Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
戸次 加奈江 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (00722084)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | イソシアネート / パッシブサンプラー / 室内環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
イソシアネートは,有害性のある環境汚染物質として知られ,特に,身近な環境中でも検出頻度の高いイソシアン酸やメチルイソシアネートは,感作性や神経系,呼吸器系への影響を引き起こすことから,日常的な曝露による健康影響との関連性が懸念されている。本研究では,これらイソシアネートに関する室内外での濃度変動に関するデータを得るため,環境調査における測定法として汎用性の高い拡散サンプラーを開発し,一般住宅での長期的なモニタリングを行った。誘導体化物質との化学反応を利用した拡散サンプラーを用いたところ,本サンプラーでは4種類のイソシアネート(イソシアン酸(ICA),メチルイソシアネート(MIC),エチルイソシアネート(EIC),プロピルイソシアネート(PIC))について1週間の連続した捕集が可能となった。特に,一般住宅の室内外ではICA及びMICの濃度が高く検出される傾向にあり,季節的な濃度変動が見られ,室内では,夏にICA及びMIC濃度が有意に高くなる傾向にあった。また,モニタリングを実施した2023年の夏季は,例年と比較しても激しい猛暑であったことから,室内外の温度変化による調整のため,エアコンの継続した使用により密閉された状況が続いたものと考察され,ICAとMICはいずれも室内の発生源による影響を大きく受けていた可能性が考えられた。 本研究で開発した拡散サンプラーを用いることで,今後,学校やオフィス,労働衛生環境など幅広い環境下でのイソシアネートの汚染状況を簡易に把握することができるものと期待される。
|