2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K18922
|
Research Institution | Toyama Institute of Health |
Principal Investigator |
金谷 潤一 富山県衛生研究所, 細菌部, 主任研究員 (80463131)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | レジオネラ / 分子疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、潜在的なレジオネラ症患者を積極的な喀痰培養検査によって診断し、その患者実態の把握を通じて、感染源を明らかにする。国内における届出患者の診断の大半が尿中抗原検査によるものであるが、従来の尿中抗原検査試薬はLegionella pneumophila血清群1(Lp1)以外の菌種・血清群に対する感度は著しく低いため、Lp1以外のレジオネラ属菌に感染している患者は把握されていない。したがって、現在まで、国内において、Lp1以外を原因菌とする潜在的なレジオネラ症患者の実態はよくわかっていない。本研究の目的は、前向き調査により潜在的なレジオネラ症患者を積極的な喀痰培養検査によって診断し、その患者実態の把握を通じて、患者の感染源を明らかにすることである。 2012年以降に当所に搬入された呼吸器検体(189症例201検体)について、レジオネラ属菌検査の結果を解析した。尿中抗原によってレジオネラ症と診断された177検体のうち、65検体(36.8%)から菌が分離され、すべてLp1であった。一方、尿中抗原が陰性であったレジオネラ症疑い患者から採取された24検体のうち、2検体からLp2が分離された。このLp2の菌株について、過去に当所で様々な環境検体(入浴施設、道路沿いの水たまり、土壌、冷却塔)から分離・保存したLp2の菌株も含めて全ゲノム配列による系統解析を実施した結果、水たまりから分離された株と近縁な系統であった。したがって、これらの株に感染した患者は、入浴施設ではない場所で感染した可能性が示唆された。また、水たまりという自然環境も患者の感染源となりうる環境要因であることが明らかとなった。本研究により、Lp1以外を原因菌とする、従来の尿中抗原検査では診断できない潜在的なレジオネラ症患者の存在が明らかとなった。
|