2021 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム情報から新興病原細菌-アルジェンテウス菌の病原性ポテンシャルを評価する
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20K18927
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
若林 友騎 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (70783835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Staphylococcus argenteus / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Staphylococcus argenteusは2015年に新種登録された新興病原細菌であり、皮膚軟部組織感染症や敗血症の起因菌である。臨床検体由来株の解析は国内外で相次いで報告されている一方で、食品や健康人手指といった非臨床検体由来株の解析は進んでいない。本研究では、保有する食品・健康人手指・環境由来株の全ゲノム配列を解読し、ゲノム情報から本菌の病原性の評価を試みる。 令和3年度は国内で分離したS. argenteus 合計44株について、次世代シーケンサーを使用して全ゲノム配列を解読した。また、昨年度に解読した国内分離株ゲノムおよびデータベースから取得したS. argenteusゲノムを加えてパンゲノム解析を実施した。解析対象とした486株は、Bayesian Analysis of Population Structure(BAPS)のクラスタリングによって、8つのBAPSに分類された。このうちの1つについては、日本の分離株のみから構成されており、そのすべてが鶏肉あるいは食鳥処理場から我々が分離した菌株であった。Virulence factor database(VFDB)を元に作成した病原因子遺伝子のin-houseデータベースに対してblast検索を実施し、病原因子遺伝子の保有状況を調査したところ、探索した病原因子遺伝子の多くがすべてのBAPSの株から検出された。また、検出された病原因子遺伝子は、臨床検体由来株と非臨床検体由来株で概ね共通していた。このことは、すべてのS. argenteus株は本質的に感染症の起因菌になりうることを示唆している。遺伝的に近縁な菌種であるS. aureusと比較したところ、興味深いことにS. argenteusはS. aureusに比べて薬剤耐性株の割合が少ないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初に予定していた通り、保有するS. argenteus株の全ゲノム配列解読を今年度で完了した。また、パンゲノム解析について一部を実施することができた。来年度はさらに詳細に解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
既知の病原因子遺伝子については、これまでに臨床検体由来株と非臨床検体由来株の間で保有状況に大きな差は認められていないため、機能未知の遺伝子も含めて、探索する遺伝子を拡張して比較ゲノム解析を実施する。また、S. aureusとS. argenteusは互いに近縁菌であるにも関わらず、異なる表現型傾向が認められたことから、保有するS. aureus株についても追加で全ゲノム配列解読を行い、両菌種の共通する部分、および異なる部分を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
参加予定であった学会等がオンラインでの開催となったため、当初予定していた発表旅費等が不要になった。また、ゲノム解析については、当初計画していたものよりも大型のシーケンサーを解析に使用したため、解析あたりの単価が低下した。今年度の研究成果から、S. argenteusの近縁菌であるS. aureusとの比較ゲノム解析が重要であることが示唆されたことから、次年度にはS. aureusのゲノム解析を追加して実施する予定である。
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