2021 Fiscal Year Research-status Report
Causal effects of physical activity on health outcomes including dementia among older adults: a proposal of a new instrumental variable
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20K18931
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 豪竜 京都大学, 医学研究科, 助教 (20867965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス感染症 / 高齢者 / 身体活動 / 操作変数 / 認知症 / ソーシャルキャピタル / 食生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の身体活動が認知症発症に与える影響を積雪量を操作変数として推定した論文が、International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity誌に掲載された。分析の結果、週当たり1回の運動は認知症リスクを下げることが示唆されたが、その関係は時間の経過とともに減衰した。本研究は、運動が認知症リスクを引き下げる因果効果が、少なくとも4年間持続することを示唆している。 また、同じ日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用い、新型コロナウイルス感染症の流行前のソーシャルキャピタルと流行期間中の高齢者の抑うつ症状との関連を調べた論文が、Health and Place誌に掲載された。分析の結果、流行前に家族や住民同士の助け合いが盛んだった地域では、そうでない地域に比べて、コロナ禍で新たに抑うつ傾向に陥るリスクが約1割少ないことが分かった。この結果から、いざというときに近所の人を頼れるような地域づくりや、オンラインで支援を受けられる体制づくりが、感染症の流行時におけるメンタルヘルスの維持のために有効であることが示唆された。 さらに、新型コロナウイルス感染症の流行期間中の食生活の変化を分析した論文が、Appetite誌に掲載された。健康アプリ「カロママ」の高齢者を含む利用者のデータを分析したところ、1回目の緊急事態宣言期間中、野菜の摂取頻度が増えておおむね健康的な食生活に変化したことが確認された。一方で、全体的に菓子類の摂取頻度も増えていたり、うつ傾向がある者や子育て時間が多い者の間では野菜の摂取頻度が少なかったりするなど、不健康な食生活もうかがえたため、注意が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心となる高齢者の身体活動と認知症の関連を明らかにした論文が、運動疫学のトップジャーナルの一つに掲載された。また、当初予定していなかった研究課題として、新型コロナウイルス感染症の流行が人々の生活や健康に与えた影響について調べた論文も2編が査読付き国際誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
引退が高齢者の健康に与える影響を国際比較可能なデータを用いて分析する。健康な人ほど長く働く傾向が見られるため、年金支給開始年齢を引退の操作変数として、引退と健康との間の因果関係に迫る。 また、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染症が高齢者の生活や健康に与えた影響についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
論文掲載料として計上していた額が、予想よりも査読に時間を要しているため昨年度中に論文の掲載に至らず、次年度への繰り越しとなった。今年度中には論文が掲載される見込みであり、論文掲載料として使用する予定である。
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